下関開催記念シンポジウム4 共シグナル分子の視点から見たがん免疫療法の開発戦略
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概要
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がんに対する免疫療法の成功には,1)適切な標的抗原の同定と選択,2)標的抗原に対する強力な免疫応答の誘導,および3)がんによる免疫抑制機構の解除が必要である.これらを目的として,免疫共シグナル分子の機能制御によるがん免疫療法の開発が世界中で進められている.その一つがチェックポイント阻害療法であり,腫瘍反応性T細胞の活性化やエフェクター機能に関する抑制性共シグナルを阻害することで抗腫瘍免疫活性を高めるものである.抗CTLA-4抗体はすでに米国FDAにがん治療薬として承認され,腫瘍微小環境での抑制性共シグナル経路であるPD-1/PD-L1に対する中和抗体も臨床試験が進んでいる.もう一つの開発戦略がキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor : CAR)によるものである.CARはがん細胞を認識する一本鎖抗体とT細胞の活性化を誘導する細胞内シグナル伝達配列を融合させたキメラ蛋白である.CARを遺伝子導入したT細胞を投与するがん免疫療法は現在欧米で多くの臨床試験が実施されており,血液系悪性腫瘍にて優れた治療効果が示されている.CAR配列には刺激性共シグナル分子であるCD28,4-1BBなどのシグナル伝達領域が組み込まれており,より強力なT細胞の活性化を誘導する構造となっている.本発表ではこれらの最新のがん免疫療法の進展と将来展望について共シグナル分子の視点から考察する.
- 日本臨床免疫学会の論文