6学会合同シンポジウム3 細胞老化シグナルを介した早産の発生機構に着目した新しい治療アプローチについての提案
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概要
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早産は全妊娠の5%で発生し,新生児の死亡や後障害の原因となる.遺伝体質,高年妊娠などの母体側の因子に感染・炎症などの環境因子,多胎などの因子が複雑に絡み合って発生すると考えられ,子宮収縮抑制剤や抗生剤などの対症療法では早産の発生を十分に制御できない現状がある.早産研究には母体因子や感染・炎症などを合わせた多面的アプローチによる研究モデルが必要だったが,これまで適切なモデルがなかった.最近我々は,妊娠子宮に細胞老化が起こり,子宮収縮に関わるPGF2αが上昇し,最終的に早産に至るという,早産の自然発生のマウスモデルを確立した.このモデルは癌抑制遺伝子p53を子宮特異的に欠失したマウスを用いたもので,約半数の妊娠マウスが早産となり,早産に伴う産仔の死亡も認められた.さらにこのマウスはLPS感受性が高く,コントロールマウスでは影響しないLPSの投与量で100%早産になった.この早産発生の仕組みとして,mTORによる子宮の細胞老化と,「妊娠ホルモン」である黄体ホルモン(プロゲステロン)低下が関わっていた.またこのLPS誘導性の早産マウスモデルに対しmTOR阻害剤ラパマイシンとプロゲステロンの同時投与が早産予防に有効であった. 本発表では,マウスモデルから得られた遺伝体質と感染・炎症との相互作用による早産の発生機構に関する新しい知見をもとに,将来の早産予防戦略の構築を考慮に入れた今後の研究の方向性についての提案を行いたい.
- 日本臨床免疫学会の論文