北海道,豊羽鉱床産インジウム多金属鉱石の化学的特徴
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概要
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豊羽鉱床の第IV ステージに属するインジウム高品位多金属鉱石の化学的性質を,東西系の信濃−出雲−石見脈,西北西系の宗谷脈,南- 北系の空知−根室脈について検討した.インジウム含有量は最高1%(空知脈,-430 mL)に達するほど多く含まれるが,平均値では分析例が少ない根室- 空知脈 (4,050 ppm, 1000In/Zn=9.1, n=5),宗谷(1,467 ppm, 1000In/Zn=3.1, n=4) では少し高く,分析例が多い出雲脈(582 ppm, 1000In/Zn=1.9 ppm, n=7),信濃脈(568 ppm, 1000In/Zn=9.0, n=29),石見脈(371 ppm, n=17; 1000In/Zn=6.4 (n=16, 異常に高い1 個を除く, n=16) では一桁低下する.全平均値は854 ppm(n=62),1000In/Zn=7.1(n=61) である.これらのインジウム多金属鉱石は鉱液の供給口と考えられている南東部で多く見られる. インジウム含有量は鉱石の亜鉛含有量と信濃脈では正相関( 相関係数0.65)するが,この相関係数は全体としては0.51 に低下する.インジウムと錫との正相関性は,石見脈(0.71) などで局部的に高い.上下500m 間の垂直変化では,深部へ向けて亜鉛含有量は減少するが,錫と砒素,インジウム含有量は増加の傾向を示す.これらの化学的特徴は熱水鉱液中でインジウムが錫および砒素を親密に伴っていたことを示唆する.ボリビアの堆積岩地域に産出する同様なインジウム含有鉱石と比較すると,豊羽鉱床はインジウム含有量では類似するが,鉄・銅・砒素・ニッケル・コバルト・銀などに富んでいる傾向がある.他方,ボリビア産の鉱石はマンガン・アンチモン・ビスマス・錫などに富む傾向が見られる.これらの傾向はそれぞれの鉱床母岩が,豊羽鉱床で苦鉄質火山岩類,ボリビアで堆積岩・珪長質火成岩類が卓越することに関係していると考えられる.
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