東京低地と中川低地の沖積層堆積物で作成した懸濁液の水素イオン濃度指数及び電気伝導度
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概要
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沖積層の原位置の化学的特性を得るための懸濁液作成法として,地盤工学会の土質試験法の懸濁液作成法(JGS 法)と,環境省の公定法の検液作成法(OM法)の両方法を参照して,適切な検液作成法を得るために基礎実験をおこなった.その結果,OM法に規定されているろ過,乾燥,振とうの各処理について,pHとECともに影響を受けることが判明した.本実験では,JGS法についてはOM法のろ過処理を加え,OM法では乾燥処理と酸処理を省くという修正をした上で,両方法による分析実験を行った.分析対象とした沖積層の堆積物試料は,産総研の都市地質プロジェクトで実施された東京低地と中川低地で得られた層序ボーリングコアから採取した.採取した堆積物試料から懸濁液を作成し,そのpHとECを測定した.pHとECの深度方向の変化プロファイルは3本のコアでほぼ共通しており,上位より下位へ,最上部低値安定区間,上部遷値区間,中部高値安定区間,下部遷値区間,最下部低値安定区間の5つの区間に識別される.中性でかつ低EC値を意味する最上部と最下部の両低値安定区間は,pHとECともに同一深度範囲であり,相当する堆積物は淡水成環境の蛇行河川堆積物に限定される.一方,弱アルカリ性,高EC値を意味する中部高値安定区間は,pHに比べてECの同区間が短いがいずれもデルタシステムの海成環境の堆積物に限定されることが判明した.中部高値安定区間のpHは,フィルタリング処理の中で1 ~1.5低下していることを考慮すると,原位置の同pHはpH9-10である.今回得られた沖積層の海成堆積物試料の懸濁水のpHとEC,主要イオン濃度は海水と比較すると,イオン濃度が桁違いに低く,イオン組成ともに違っていることから,堆積後現時点までに顕著なイオンの溶脱・移動や化学反応があったものと推定される.しかし,今回得た沖積層のpHとECの深度変化の特徴的なプロファイルは,淡水成と海成の堆積環境を識別する指標として利用できるものと期待される.
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