企業年金を取り巻くリスクとその管理政策
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概要
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本稿は,酒販組合年金事件を素材に,企業年金のリスク管理について,その問題点と規制の必要性を論じたものである。<br />検討素材として,東京地判平成19年9月28日判タ1288号298頁(酒販組合年金事件)をとりあげ,根拠法のない企業年金はどのようなリスクにさらされているか,を確認した。一般的には,積立不足等の財政リスクが論じられるが,本件の検討を通じて,財政リスクの損失を消却するためのハイリスクな投資を受容したり,管理者の思惑によって解散すべき年金を継続して損失を大きくしたりという,いわゆる受託者リスクの管理が必要なのではないかとの示唆を得た。<br />企業年金を老後の生活保障の柱として位置付けるならば,企業年金は公共性を帯びる。この公共性を維持するための公的規制も必要とされる。実効性ある公的規制を行うために,リスク管理手法を応用した規制政策が求められよう。