知的障害を伴う自閉症児・者における能動文と受動文の統語知識:─典型発達児との比較─
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概要
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近年,自閉症児・者の言語の統語的側面に視点を当てた研究が行われ始めており,自閉症児・者は統語的側面にも問題があることが指摘されている.しかし,日本語を母語とする自閉症児・者の統語的側面に焦点を当てた研究はほとんど行われていない.本研究は,知的障害を伴う自閉症児・者の能動文と受動文の理解課題の正答率を典型発達児と比較することを目的とした.対象児は13歳から23歳の知的障害を伴う自閉症児・者12名であった.語い年齢が同程度かそれ以下の3歳から6歳の典型発達児23名を統制群とした.実験者が口頭で提示した能動文または受動文に対応する絵を2枚の絵から選択させた.その結果,自閉症児・者群,典型発達児群ともに,能動文よりも受動文で正答率が有意に低かった.また,自閉症児・者群の能動文と受動文の理解課題の正答率は典型発達児群よりも有意に低かった.本研究の結果,日本語を母語とする知的障害を伴う自閉症児・者は統語的側面に問題を有する可能性が示唆された.
著者
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伊藤 友彦
Department of Education for Children with Disabilities, Tokyo Gakugei University
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松本(島守) 幸代
Research Fellow of the Japan Society for the Promotion of Science
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中川 琴絵
Tokyo Metropolitan Eifuku Gakuen Special Needs School