炎症収束因子—自然免疫から獲得免疫への橋梁—
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概要
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体外からの細菌感染や外傷などによる急性炎症は早期に血管浸過性亢進と好中球を中心とする炎症細胞の浸潤が起こる.炎症により破壊された組織は正常の組織に修復される.急性炎症で好中球の浸潤がおこりその後マクロファージ,リンパ球の浸潤と異物の貪食除去の炎症収束,組織修復と生体反応は展開する.急性炎症は自己制御され収束(Resolution)し組織修復する.この転換期に脂質メデイエータのLipoxinやResolvinや抗炎症サイトカインIL-10やアデイポカインChemerinなど多くの因子が作用する.Lipoxinはリポキシゲナーゼ(LOX)により合成される.急性炎症の早期は5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)がロイコトリエンB4(LTB4)を合成し好中球の炎症部位に遊走させる.その後マクロファージの15-LOXや血小板の12-LOXが誘導され,5-LOX,と12-LOXまたは15-LOXの2つの酵素を介してLXA4またはLXB4が合成される.このLipoxinは強い抗炎症作用を有している.LXA4はG蛋白結合型受容体ALXに結合し好中球の遊走抑制,マクロファージの遊走活性化などを生じ炎症収束過程の早期に作用する.Chemerinは好中球からのプロテアーゼにより前駆蛋白より活性化されマクロファージ,樹状細胞遊走,抗炎症作用を起こす.またアセチルサリチル酸(アスピリン)の作用したシクロオキシゲナーゼ(COX2)はPGE2産生を抑制し,さらに5-LOXと共に15-epiLXA4を産生し強い抗炎症作用を示す.以上の炎症の収束(Resolution)は自然免疫と獲得免疫を繋ぐ能動的な過程であり新たな炎症治療の戦略の標的である.
著者
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