自然環境情報GISと国土数値情報を用いた日本全域の竹林分布と環境要因の推定
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概要
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近年,里地里山の主要な景観要素のひとつである竹林の拡大が西日本を中心に各地で報告されているが,日本全域での竹林分布の実態は明らかにされていない.本研究では,既存の竹林分布データと基盤環境データを用いて日本全域における竹林分布可能域を推定し,竹林の分布を規定している環境要因について考察した.また,経年的に詳細な竹林の分布と拡大状況が明らかになっている地域において,竹林分布可能域図の精度を検証し,その有効性を評価した.まず,自然環境情報GISデータを用いて竹林に該当する凡例を統合し,日本全域の竹林の在不在データを3次メッシュレベルで作成した.次に,竹林在不在データと国土数値情報等による環境要因データ(自然要因:暖かさの指数,年間降水量,最深積雪深,表層地質,斜面傾斜角,人為要因:森林率,農地率,宅地率)から,一般化線形モデル(GLM)によって日本全域における竹林の分布確率を求めた.その結果,適合性の高いモデルが作成された(AUC=0.815).広島県の6地区で作成された詳細竹林分布図で検証した結果,GLMによる竹林分布確率と1000 ha当たりの竹林面積には高い正の相関があった(R2=0.872).また,同県の4地区で,1980年代~2000年代の約20年間の年間拡大率と竹林分布確率との関係についても両者の間にも高い正の相関が認められた(R2=0.982).ROC分析により得られた閾地である0.48以上の竹林分布確率を持つ3次メッシュは,太平洋側では宮城県以南,日本海側では新潟県以南の西日本の沿岸部の平地から丘陵地を主体に広く分布していた.自然環境情報GISでは竹林の分布が少なかった鳥取県,愛媛県,長崎県などでは,より広い面積で竹林が分布する可能性が示された.自然的要因では,竹林の分布確率に対して,暖かさの指数,年降水量および最深積雪量は凸型,斜面傾斜角は単調減少の反応を示していた.人為的要因としての土地利用率は,森林率,農地率,宅地率のいずれも竹林の分布確率に対して凸型の反応を示しており,森林,農地,宅地がモザイク状に分布する里地里山的な環境において竹林の分布確率が高いことが示された.これらの結果を踏まえて,竹林の分布確率と人口変化パターンから,地域特性に応じた国土モニタリングや管理手法を考えるための基礎となる地域類型の手法を示した.
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