冠動脈バイパス術後2カ月目から右心不全症状を呈したが,心膜の肥厚・石灰化を伴わず収縮性心膜炎として加療するまでに時間を要した1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は64歳,男性.3年前に左主幹部および3枝病変に対して冠動脈バイパス術を施行.術後2カ月目より両側胸水・腹水・下腿浮腫を認めた.利尿薬投与で症状は一時的に軽減するため,近医入退院を繰り返した.しかし,徐々に症状が増悪し,術後30カ月目に当院循環器内科に精査入院となった.聴診上,心膜叩打音を認め,経胸壁心エコー検査では左室流入血流速波形E波の呼吸性変動と吸気時の心室中隔の左室側への偏位を認めた.胸部CT検査では心膜の肥厚・石灰化は認めなかったが,心臓カテーテル検査では,右室内拡張期圧波形がdip and plateauを呈していた.上記所見より,心膜の肥厚・石灰化を伴わない収縮性心膜炎と診断し,冠動脈バイパス術後34カ月目に心膜剥離術を施行した.術後,腹部膨満と下腿浮腫は軽減し,中心静脈圧は術前の15mmHgから4mmHgまで低下した.術後14日目に退院した.開心術後の収縮性心膜炎の発生頻度は0.2~0.3%と低いが,開心術症例が右心不全症状を呈した場合,常にその可能性を考慮する必要がある.
著者
-
三浦 崇
長崎大学病院心臓血管外科
-
江石 清行
長崎大学病院心臓血管外科
-
橋詰 浩二
長崎大学病院心臓血管外科
-
橋本 亘
長崎大学病院心臓血管外科
-
尾立 朋大
長崎大学病院心臓血管外科
-
前村 浩二
長崎大学病院循環器内科
-
瀬戸 信二
長崎大学病院循環器内科
-
松隈 誠司
長崎大学病院心臓血管外科
-
佐藤 大輔
長崎大学病院心臓血管外科
-
押富 隆
長崎大学病院心臓血管外科
-
谷口 真一郎
長崎大学病院心臓血管外科
-
久冨 一輝
長崎大学病院心臓血管外科
-
久冨 一輝
長崎大学病院 心臓血管外科
関連論文
- 発熱を契機に torsade de pointes (Tdp) を発症したLQT2遺伝子変異を伴うQT延長症候群の1例
- 循環器疾患とサーカディアンリズム(医療薬学の創る未来 科学と臨床の融合)
- 血管内皮と時計遺伝子の関連性をみる (特集 生体リズムから心血管病を探る)
- 洞徐脈・洞停止 (特集 危険な不整脈--みきわめ方と正しい対応) -- (徐脈性不整脈)
- 87) Coaptatoin depth 19.5mm,Posterior leaflet angle70度の虚血性MRに対するundersized MAP(第104回日本循環器学会九州地方会)
- 循環器疾患の時間治療 (特集 時間薬理学--最適な投与方法を求めて)
- 糖尿病と不整脈 (特集 糖尿病と循環器疾患)
- メタボリックシンドロームと概日リズム (メタボリックシンドローム2(後篇)メタボリックシンドロームの基礎) -- (成因と病態 遺伝子・病態・標的分子の面から)
- PTX3による心血管疾患の診断
- T-Wave Alternans と late potential に対する交感神経β受容体刺激と遮断の影響
- 致死的心室頻拍を合併した膜性部心室瘤の1例
- 胃瘻造設後に異型たこつぼ型心筋症を発症した筋萎縮性側索硬化症の1例(症例検討)
- 睡眠習慣と生活習慣病 : 睡眠習慣の生活習慣病発症への関与 睡眠習慣と心血管疾患 (特集 睡眠と生活習慣病 : 基礎・臨床研究の最新知見)
- 冠動脈バイパス術後2カ月目から右心不全症状を呈したが,心膜の肥厚・石灰化を伴わず収縮性心膜炎として加療するまでに時間を要した1例
- 解離性大動脈瘤の保存的治療中, 気胸の発症を契機に診断された肺血栓塞栓症の1例
- 下大静脈フィルター内塞栓子の経カテーテル的吸引が診断に有用であった肺塞栓症の1例
- 土-9-O9-13 胸腔および縦隔腔におけるリネゾリドの組織移行性は高い(感染制御(治療薬)3,一般演題(口頭)9,再興、再考、創ろう最高の医療の未来)