福祉政策論の日本的展開:「普遍主義」の日英比較を手がかりに
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概要
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「普遍主義」あるいは「普遍化」という概念の日英間のずれに着目することによって,戦後福祉政策論,および,戦後福祉国家の日本的特徴の一端をとらえる可能性を示したい.本稿では,最初にイギリスにおける「普遍主義」および「選別主義」概念を整理したうえで,わが国の論者が,このイギリス的な概念を日本の政策分析に適用しようとした努力を振り返りながら,その「日本的特徴」に着目する.次に視点を変えて,一般にわが国の論者がこの概念を適用しようとした1980年代以降の政策展開ではなく,それ以前,とくに1950年代末から1970年代前半までの期間,いわゆる福祉六法時代における政策展開に,「普遍主義」「普遍化」概念をあてはめてみる.「普遍主義的福祉政策」あるいは「福祉サービスの普遍化」は,わが国においては,イギリス的な意味で言えば,ほぼ戦後すべての時期を通じて,あてはまるとも言えるし,あてはまらないとも言える.そういう意味では,「普遍主義」概念は,少なくとも福祉政策の歴史的分析のための有効な枠組みとはなりえない.わが国の福祉政策の歴史的展開を適切に分析するためには,戦後福祉制度の基盤の1つである生活保護制度の歴史的分析が重要である.