毛髪の結晶融解挙動におよぼすジスルフィド結合の影響
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概要
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毛髪繊維の微細構造,特に中間径フィラメント(IFs)と中間径フィラメント関連タンパク(IFAP)からなるIF-IFAP複合体におけるIFs構造安定化機構を解明するために,過酢酸(PAA)を用いてジスルフィド(S-S)結合を酸化した毛髪繊維の熱分析におけるα結晶融解挙動と構造的配向性の関連性について検討した。PAA処理により,シスチン残基のS-S結合がシステイン酸に解離したこと,さらに未処理毛髪と同等のα結晶構造を維持していたことを確認した。湿潤試料の高圧示差走査熱量測定(HPDSC)におけるα結晶融解ピークは,PAA処理時間に伴って変化し,低温側および高温側の2つのピークに分離した。さらに,両ピーク面積の和は未処理毛髪よりも減少した。一方,偏光顕微鏡観察では,IFsの無配向化が起こる温度でもIFAPの配向性は一部残存しており,PAA処理で解離するS-S結合がIF-IFAP境界に存在することが示唆された。以上のことから,IF-IFAP分子間相互作用およびIFsの熱安定性保持に対してS-S結合の寄与率が高い領域と疎水性相互作用の寄与率が高い領域がIFs分子内に存在することが推察された。
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