手術後晩期疼痛に対する柴胡桂枝乾姜湯応用の試み
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概要
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我々は手術創部痛に対して柴胡桂枝乾姜湯が著効を示した症例を偶然の機会に経験した。そこで手術創の痛みを訴えて来院した10症例に, 柴胡桂枝乾姜湯証の有無と無関係に主訴を目標として本薬方 (虚寒状態の強いものには附子を加えた) の投薬を試みた。証を無視しての使用であったが, 本薬方は手術創部痛に対して10例中8例に有効であり, 実証と考えられる患者にも効果がみられた。手術の1ヵ月〜15ヵ月後に本薬方が投薬されたが, 投薬開始時期による効果の差はみられなかった。効果の発現は投薬後5日から2週間以内にみられ, 疼痛の消失は投薬後5日から6週間で得られた。疼痛消失後, 本薬方を中止しても疼痛は再発しなかった。有効例の手術部位は胆嚢摘除術, 胃切除術, 子宮全摘除術, 肺葉切除術であり, 無効例2例は乳癌の拡大根治術であった。疼痛が手術創に限局している場合に本方剤は有効であることが示唆された。
- 社団法人 日本東洋医学会の論文