最近分離した百日咳菌の血清型 : 第II報 前野株と新分離株に対する患者血清の凝集素価の相違について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
前報と同一の三浦半島一円の百日咳地域的流行について,臨床的に百日咳と診断された聖ヨゼフ病院外来患者血清127例の血清凝集素価を測定したところ,従来凝集反応およびワクチン用に用いてきた前野株(血清型1-2-3-4)凝集原と,本流行時に分離された新分離株凝集原との間に凝集素価の点で有意な差が認められ,新分離株に対してより高い値を示すものが凝集反応陽性血清111例中全体の70.3%を占め,同値のものはわずか15.3%,前野株に高い値を示すもの14.4%であつた。この新分離株に高い凝集素価を示す傾向は,病日が浅い時期に顕著であり,病日40日未満では,母集団が異なるとみなされた前野株凝集原に対して5倍以下を示したものが病日40日未満において35%を占め新分離株と前野株凝集素価には統計上有意な差が認められたが,病日が進むとその割合は減少した。前野株は血清型1-2-3-4であるのにかかわらず,このように前野株と新分離株に対する患者血清の凝集素価に相違の起こる原因を,血清ならびに菌の側から追究するため,両株の家兎免疫血清での交叉吸収試験,患者血清ならびに各因子血清での吸収試験,菌液の安定性,メディウムの違いによる被凝集性などについて調べた結果,新分離株に新たなK凝集原因子の存在や菌液における各因子の安定性,被凝集性などに差は認められず,両株間の凝集素価の違いは,新分離株の多くが前報で明らかなように血清型1-3-4であるが,そのうち因子3が主因子であるのに対し,使用した前野株は,血清型1-2-3-4ですべての凝集原因子を有してはいるが,新分離株に比し1と4因子の量は多いが,因子3が少ないことによる主因子の量的な違いによるものであることがわかつた。
- 日本細菌学会の論文
著者
-
関矢 加智子
北里大・薬・微生物
-
関矢 加智子
北里大 薬
-
関矢 加智子
北里大学 薬 微生物
-
中瀬 安清
北里大学薬学部
-
関矢 加智子
北里大学薬学部微生物学
-
山田 光男
聖ヨゼフ病院
-
高宮 篤
聖ヨゼフ病院
関連論文
- 3. 劇症型連鎖球菌感染症の発症機序の解析(第16回学内免疫談話会,学術情報)
- 「微生物試料作製の基礎的技法」ネガティブ染色法
- インスタント培地
- 電子分光結像法による大腸菌凍結超薄切片の炭素像
- チオール活性化毒素による溶血機構の超微形態学的解析(X)
- IB-2 Bordetella属菌の低分子毒素による気管線毛上皮細胞の細胞障害作用について
- パーソナル・コンピュータを用いたFFTフィルタの生物画像への応用
- ストレプトリジンOによる溶血機構の超微形態学的解析 : そのVIII
- 病原性大腸菌のタイプIII型分泌機構の超微形態学的解析
- 病原大腸菌の病原因子の分泌機構
- Characterization of the damage to membranes caused by bacterial cytolysins
- 電顕で見る分子の会合-細菌毒素による溶血機構の解析-
- 分子の配列を電顕で見る-ストレプトリジンOにより形成される赤血球膜の孔-
- 最近分離した百日咳菌の血清型-2-前野株と新分離株に対する患者血清の凝集素価の相違について
- 最近分離した百日咳菌の血清型
- Bordctella pertussisの病原因子について
- 最近分離した百日咳菌の血清型 : 第II報 前野株と新分離株に対する患者血清の凝集素価の相違について
- 最近分離した百日咳菌の血清型
- 袋耳の二家系について
- 最近分離した百日咳菌とパラ百日咳菌の薬剤感受性