凍結乾燥免疫血清の溶解性に関する研究 : とくに分散媒濃度と保存について
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概要
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凍結乾燥血清の実用上の難点は復水時に溶けにくくなること, および室温保存で長時間安定な力価を保持できないことであるが, 分散媒としてグリシンあるいはグルタミン酸ナトリウムを添加することによりこの問題点はほぼ解決できた。また, 螢光色素標識抗体の凍結乾燥標品においても同様の効果が認められた。<BR>1. 凍結乾燥血清の復水時の溶解時間は精製方法により異なり, 硫安分画のγ-グロブリンを多く含むeuglobulin分画血清がもつとも難溶性を示した。すなわち, 硫安分画法により得られた精製ジフテリア抗毒素ウマ抗体の硫安20〜50%, 30〜50%および36〜50%分画の同じ蛋白量をそれぞれ5mlずつ凍結乾燥したものを溶解するに要する時間は22分, 26分および5分であつた。<BR>2. 凍結乾燥血清の溶解促進のために添加する分散媒, グリシンあるいはグルタミン酸ナトリウムの濃度と血清蛋白量の間には相関関係があり, 両分散媒の至適添加濃度は4〜12%であつた。<BR>3. 2種類のグリシン添加乾燥ウマ免疫血清を室温に3〜7年間保存した場合, 力価はやや低下する傾向がみられたが, 溶解性はほとんど変らなかつた。<BR>4. 抗ヒトIgGウサギ螢光色素標識抗体の凍結乾燥に際し, 一定量のグリシンあるいはグルタミン酸ナトリウムを加えることにより, 溶解性を高め, 不溶解物に由来する非特異螢光を除去できた。なお, 標品を37Cで1ヵ月間保存しても, その溶解性および抗体価は変らなかつた。
- 日本細菌学会の論文
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