ブドウ球菌のウサギ皮内感染における免疫の機序,とくにブドウ球菌の皮内感染における毒素の影響について
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概要
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ブドウ球菌のウサギ皮内感染に際してα毒素がどのように影響するかについて検討した。まず正常なウサギにα毒素のみの皮内攻撃を行なうと,暗紫色の出血を伴つた著明な潰瘍とその周囲をとりまく発赤がみとめられた。この場合攻撃前に予めブドウ球菌の生菌でウサギを前処置して週を追つて,上記のような毒素攻撃を行なうと,無処置の対照にみられたような壊死の出血性が失なわれて,壊死が縮小して治癒に向う傾向を示たしが,一方ではとくに生菌感作3週後のウサギにα毒素の攻撃を行なうと,無処置のウサギにくらべて明らかな発赤の亢進がみとめられた。次にこのように感作されたウサギに前もつてブドウ球菌ワクチン,あるいはトキソイドを注射しておくと,α毒素攻撃後にみられる発赤が減退すると同時に局所の壊死の治癒が一層促進した。以上のように,前もつてブドウ球菌による生菌感作をうけたウサギは毒素の攻撃に対して一方では毒性の中和,他方では発赤の亢進という正常のウサギとは異つた態度を示した。次に生菌に添加されたα毒素は注射局所の膿瘍形成を激化し,明らかに感染を助長したが,予め生菌による感作をしておくと,生菌のみの場合と同様にα毒素を加えた攻撃の場合でも,非感作の正常ウサギの場合にみられたような膿瘍の増悪はなく,逆に膿瘍の縮小が著明になり,病変の激化は抑制された。また一方において強い発赤の亢準がみられたが,非感作の対照にみられるようなα毒素の強い出血性は失なわれていた。これらは血中抗毒素の影響をうけた結果であると考えられる。このようにしてブドウ球菌のウサギ皮内感染に際してα毒素はその感染を助長するが,感作されたウサギでは産生されているα抗毒素の影響をうけるために攻撃局所の感染の助長は著明でない。しかしこのような感作ウサギにワクチンまたはトキソイドの静注を行なつた直後に前と同様に皮内攻撃を行なうと,膿瘍の縮小はさらに著明となり治癒の傾向を示した。それと同時に亢進していた発赤の減退が著明であつた。以上の実験結果について若干の考察を加えた。
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