鉛のラット硬組織への分布におよぼす加齢の影響
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概要
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鉛中毒に対する生体の感受性の差異については年齢因子の影響が大きいことはよく知られているが, その理由はまだ充分解明されていない。また実験動物を用いて, この感受性の差異について検討した研究も少ない。著者は歯と大腿骨への鉛とり込みと年齢との関係があるかいなかを明らかにするため<SUP>210</SUP>Pbをトレーサーとして実験を行なった。実験動物として, 3週齢, 3カ月齢, 22カ月齢のウイスター系ラットを使用した。<SUP>210</SUP>Pb10μci/kgと種々の濃度の硝酸鉛溶液をラットの腹腔内に1回投与後, 3日目の大腿骨と歯の鉛摂取率を算出した。<BR>結果は以下のとおりであった。<BR>(1) 鉛の排泄様式は, 微量鉛 (<SUP>210</SUP>Pb10μci/kg単独) 投与時は指数函数的に減少したが, 1mg/kg投与時には直線的に減少した。21日間の尿および糞中総排泄率は, 前者で39.8%, 後者で24.3%であった。また糞中排泄率は常に尿中排泄率より多かった。<BR>(2) 投与鉛量が増すにつれて, 硬組織の鉛摂取率は低下した。とくに10mg/kg, 100mg/kg投与時の鉛摂取率は著しく低下し, この傾向は老年ラットできわめて著明であった。<BR>(3) 対照群の大腿骨, 切歯, 臼歯の平均鉛摂取率はそれぞれ, 3週齢で6.52%, 0.81%, 0.55%。3ヵ月齢で2.52%, 0.76%, 0.17%, 22ヵ月齢で2.28%, 0.97%, 0.21%であった。<BR>(4) 1mg/kg群の大腿骨, 切歯, 臼歯の平均鉛摂取率はそれぞれ, 3週齢で2.50%, 0.37%, 0.19%。3ヵ月齢で0.80%, 0.17%, 0.05%。22ヵ月齢で0.22%, 0.07%, 0,02%であった。<BR>(5) 対照群の場合硬組織1g当りの鉛量は, 幼若ラットでは大腿骨にきわめて多かったが, 成熟および老年ラットでは切歯の鉛量がもっとも多かった。
- 有限責任中間法人 日本口腔衛生学会の論文
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