歯面照度の衛生学的研究 : Cdsを用いた歯面照度の測定及び歯鏡の効果
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概要
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歯科においては古くから歯科用照明装置が用いられているが, 歯科医師の疲労に対する訴えには眼に関するものが多い。しかし, これまで歯科用照明についての研究は誘に少ないことから著者は表題の如き研究を行なった。まず著者は実験的に総義歯患者の人工歯内に盤接光電素子 (Cds) を挿入することによって各歯面の照度を測定することを可能とし, これを用いて各歯面の明るさを測定し, 同時に歯鏡が歯面の照度を高めるのにどの程度役立つかについてを検討した。即ち16個のCdsを, 総義歯の人工歯6遠心面, 舌面, 頬側面, 1唇面, 1舌面, 4567咬合面および6遠心面, 舌面, 頬側面, 4567咬合面に埋入し, 各歯の受光面として測定時のCds光導電体の指数を測定し, 得られた値を照度計によって換算した。<BR>1) 実験用総義歯を装着した被検者を歯科用治療椅子にすわらせ, 上顎咬合面上からの照射をA, 下顎咬合面上からの照射をC, その二等分線上からの照射をBの方向とし, 正中位より20°右寄りをX, 正中位をY, 正中より20°左寄りをZの3位置とし, 9方向よりそれぞれ照射し, 照射位置による明るさの変化を観察した。<BR>2) 歯鏡による歯面照度の効果をみるために外径を異にした3種を用いて歯面照度を測定し, さらに直射時の照度を基準とした場合, および中切歯唇面照度との割合について検討した。<BR>3) 市販されている, 22mmの歯鏡60個について反射率および反射光量を測定した。<BR>4) 外径16mmと35mmの2種の歯鏡を用いて着色した米粒を選別する能率および疲労について測定した。Landolt環と同様の直径10mmと16mmの2種類の黒色のリング (L環) を用いて反射によりこれを読みとらせる能率および誤りについて測定した。<BR>5) 集団検診において, 歯鏡外径の大小による結果の影響を検討した。<BR>6) 歯鏡別検診時間について検討を行なうために3種の歯鏡を用いて検診を行ない一顎の検診に要する実時間を求めた。<BR>以上の結果, 1) 〜7) にしめすような内容を明かにしえた。<BR>1) それぞれの位置から照射した場合の直射照度は, 上顎においてはA, B, C位置の順に各歯面照度の増加がみられY位置の中切歯唇面において最高を示し, 6遠心面において最低で最高に比し僅かに0.04%でしかなかった。下顎においては, C, B, A位置の順に上顎とは反対に照度を増し, AZ位の4咬合面において最高を示し, 6遠心面のCX位が最低で最高に比し, 0.1%にすぎなかった。<BR>2) 歯鏡利用の照明効果は上下顎第1大臼歯遠心面においては19mm歯鏡が有効であったがその他は外径の大きい歯鏡において効果的であった。<BR>3) 市販歯鏡の反射率は, JIS規格に達しているものはなかった。<BR>4) 歯鏡の反射率と反射光量は歯鏡外径の小さいものでは, 反射率は大であるが, 反射光量は外径の大なるものに大である。<BR>5) 着色した米粒の選別作業を歯鏡を使用したことのない者によって行った結果は19mm歯鏡では, 35mm歯鏡を使用して実施した場合に比して能率が悪く, しかも外径の小さい歯鏡を用いた場合に疲労感を強く訴えた。歯科医師について行った結果も同様であったが34,000Luxの場合に効率がよく, しかも35mm歯鏡の方が能率的で, フリッカー値からも疲労の少ないことがみられた。<BR>6) L環を用いての作業では34,000Luxの方が能率的であった。このことから歯鏡の大きさと照射光量によって, 能率の異なることが判明した。<BR>7) 集団検診においては歯鏡外径の大きさが時間的能率に差のあることおよび診断の誤りを左右することが認められた。