ガウジ層のせん断強度に関する実験結果について
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概要
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室内実験において,ガウジ層を挟む模擬断層にせん断力を加え,ガウジ層のせん断強度を測定する実験を行った.使用したガウジ層を構成する物質は,石英砂と大理石を粉砕して作成した方解石砂である.粒径はいずれも,0.125-0.250 mmであり,ガウジ層の厚さは2 mmまたは3 mmである.剛性の低いバネを用いて断層の上盤に力を加えたため,ほとんど例外なく,スティックスリップが発生した.その最終的なすべりの前には,前兆的なゆっくりとしたすべりと,これに伴うダイラタンシーが発生した.すなわち,上盤は持ち上がり,ガウジ層が膨張(ダイラタンシー)しているように見えた.この実験とは別に行った光弾性物質を用いた実験結果を考慮すると,せん断力の増加によってガウジ層内部には応力鎖(強い応力でつながった柱状の粒子群)が発生し,次第に斜めの方向に発達するようになり,最終的にこれが回転してダイラタンシーが発生するのではないかと推察された.せん断強度はガウジ層が薄いほど大きく,また石英砂より方解石砂の方が大きい値を示した.これらの事実はガウジ層内部に強力な柱状の応力鎖ができ,この柱の強度がガウジ層のせん断強度を決定することを示唆している.実際の断層のガウジは粒径がフラクタル分布をしていることもあり,このモデルがどこまで適用できるかは今後の課題である.
著者
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吉岡 直人
公益財団法人 深田地質研究所
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堀 高峰
独立行政法人海洋研究開発機構
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阪口 秀
独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域
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堀 高峰
独立行政法人海洋研究開発機構 地震津波・防災研究プロジェクト
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