ヒドラジン処理による加硫ゴムの劣化防止 : 特に表面龜裂と硬化防止に就いて
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概要
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生ゴムに比較すると、加硫ゴムの劣化現象には特徴がある。酸素による硬化と解重合が注目されて來たが、生ゴムとの相違に就いては満足な説明がない。加硫ゴムが硬化の過程を経て、粘着性を帶びる段階は、分子の崩壞を意味し、酸素による影響を無視することが出來ない。しかしながら、加硫ゴムの硬化過程-特に、その表面が僅かな伸張で龜裂するような現象には、後加硫もまた重要な役割を果しており、架橋型硫黄の不均衡な集團 (Colony)1) がゴム表面を過加硫にするものと考えた方がより合理的である。この報文に於ては、加硫ゴムをヒドラジンで処理し2)、後加硫の進行3)をとどめるとともに、チオケトンをヒドラゾン又はアジン架橋で4)置換え、そのものの老化傾向を追跡した。ヒドラジンで処理した加硫ゴムは、未処理のものに比べて著しい特徴がある。モジュラスと強度が増大し、更に伸率も増加するため、所謂「硬化現象」を示さない。特に、ヒドラジン処理が充分であると、恒久的な柔軟性をもち、長期間放置しても、或は日光に曝露しても、僅かな伸張に伴う表面龜裂が認められない。既に、後加硫の現象に就いては「加硫ゴム中に殘存するチオケトン型結合硫黄を中心として、遊離硫黄の活性に伴つて生ずる新たなチオケトンとともに後架橋に転じていく3)」ことを指摘した。ヒドラジン処理によつて後加硫の進行をとどめた試料が硬化しないことから、加硫ゴムの硬化現象の成因として、架橋型硫黄の増加に伴う網状化分布を重要視する必要がある。