牛乳とホエー蛋白質混合系の熱安定化に寄与する予熱脱脂乳中の因子
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概要
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脱脂乳にホエー蛋白溶液を加えたホエー増強乳は,脱脂乳を予熱(80〜95°C,10 min)した場合は,熱安定化される(1).ホエー増強乳を熱安定化する予熱脱脂乳中の因子について検討した.予熱脱脂乳(85°C, 10 min)を未予熱の脱脂乳に透析しても,熱安定化効果に変化は認められないから,脱脂乳予熱による塩類平衡の変化は,ホエー増強乳の熱安定化に寄与していないものと推定された.脱脂乳から超遠心で分離したカゼインミセルを,脱脂乳透析水に分散して予熱した後に,ホエー蛋白質を加えた復元脱脂乳,および超遠心で得られたホエーを予熱後カゼインミセルを加えた復元脱脂乳は,ホエー増強乳を熱安定化しなかった.これに対して,カゼインミセルと超遠心ホエーから調製した復元脱脂乳およびカゼインミセル,脱脂乳透析水,ホエー蛋白質またはβ-ラクトグロブリンから調製した復元脱脂乳は,予熱した場合はいずれもホエー増強乳を熱安定化した.以上の実験から,ホエー増強乳を熱安定化する因子は,脱脂乳の予熱によってもたらされる脱脂乳中のカゼインと,ホエー蛋白質またはβ-ラクトグロブリンの相互作用であることが示された.また,β-ラクトグロブリンの代りにシアノエチル-β-ラクトグロブリンを用いた復元脱脂乳は,予熱しても熱安定化効果を示さないから,熱安定化効果をもたらす相互作用には,β-ラクトグロブリンのSH基またはS-S結合が関与しているものと推定された.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文