デンプンノジメチルスルホキシド溶液について
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概要
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デンプンを分解することなく完全に分散させ,かつ安定な溶液を与えるような溶媒を選択するため,まず多数の水性溶媒および有機溶媒を用いて,ペーパークロマトグラフ法により定性的な試験を行なった.その結果,デンプンの溶媒はアミロースをよく分散するがアミロペクチソの分散能の乏しいもの,およびアミロース,アミロペクチンの両方をよく分散するものの2種に大別されることを認めた.さらに超遠心法により沈降状態をしらべたところ,ペーパークロマトグラフと同様な傾向を示し,なかでもDMSOの分散能力が最も高いことを認めた. デンプンのDMSOへの溶解過程をしらべるため,定速で昇温させつつ粘度の変化を測定したところ,デンプン粒のDMSOへの溶解は吸熱的であり,粘度-温度曲線は極大点を有し,これは熱水中での糊化と類似の過程をへることが見出された.したがってデンプン粒のDMSOへの溶解のためにはある程度の加温が必要であり,このことは沈降測定によっても認められた.さらにデンプンのDMSO溶液について20〜70°Cの温度範囲で,溶液の粘度の温度変化および極限粘度の温度依存性を検討した結果,この溶液は会合しておらず,また分解のおそれもないことを認め,かつ室温に長期間保存しても溶液は安定であり,酵素によっても分解されないことが示され,DMSOはデンプンの溶媒として充分高分子物理化学的測定に用い得ることが明らかにされた.さらに各種のデンプンをDMSOに溶解し,沈降図形を比較した結果,各種デンプンの場合のアミロペクチン対アミロースの沈降係数の比はデンプンの種類によって異なり,その大きさはほぽB図形デンプン<C図形デンプン<A図形デンプンの順序になっていることが見出され,デンプン粒の溶解の難易はX線図形とある程度の対応を示すことが認められた.
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