春まきタマネギの生態ならびに生育相に関する研究 (第1報) : 外観的な生育と栄養生長期の生育相
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概要
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春まきの直はんおよび育苗移植栽培したタマネギの生育経過を追跡して, 次の結果が得られた。1) 茎葉部の生体重 (対数値) は7月までほぼ直線的に増大するが, 移植では6月中旬ころから増加率がやや高くなる傾向がある。不定根は6月下旬から7月上旬にかけて特に発生が多く, 高温と球の形成にともない枯死する。不定根数, 茎葉部生体重, 分化葉令の3形質間にはいずれも高い相関が認められるが, 球の形成期には相関は低くなる。2) 葉の分化速度は6月中旬から速くなり, その状態が継続するが, 球の形成が開始されると遅くなる。新葉の出葉は7月に最も速くなる。出葉葉令の変異係数はりん葉形成期まで次第に小さくなるが, その後は増大する。3) 最長葉長は6月20日ころから急速に増大する。移植ではりん葉形成期以後は増加しないが, 直はんではその後もいくぶん増加する。4) 球径によつてりん葉の形成期を判定することはできないが, 肥大率 (球径/首径) はよい指標となり, 約1.8に達したときにりん葉が形成される。移植では定植後肥大率が増大して疑似球の形成を行なうが, 活着すると肥大率はしだいに低下する。5) タマネギの栄養生長は前期栄養生長相と, 盛んな葉の分化と生長をともなう後期栄養生長相とにわけられる。葉の盛んな生長は, たぶん長日の刺激によつておこる球形成の前段階的な生育相であろう。6) 移植栽培における栄養生長は, 移植の影響により後期栄養生長相への転換が遅延され, 葉の伸長が抑制された状態で根系が再生されるため若返つた状態となり, 活発な後期栄養生長をもたらす。移植栽培が比較的安定した生育を示すのは, 疑似球からの発根が不良土壌条件下でも比較的容易に行なわれ, また根群が浅根性になることと, 前述の若返つた状態により, 確実に後期栄養生長相へと転換するためであろう。