春まきタマネギの生態ならびに生育相に関する研究 (第2報) : 葉の重量および乾物率の変化
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概要
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1. 栄養生長期における一枚の葉の乾物重は, 次第に増大して最大期に達した後, 減少して枯葉する。このような状態は下位の葉から上位の葉へと次々と移行する。葉身の乾物率は葉身重の最大な時期ころに最低となり, 一度やや増大してから枯葉直前に再び低下する。葉鞘の乾物率は葉身と同時期ころに最低となるが, 乾物重の最大期は葉身よりも遅れる。これは内容成分が葉身から葉鞘および上位の葉へ転流することと密接に関連している。2. 個々の葉の生体重に占める葉鞘重の比率は生育の経過とともに上昇するが, 上位の葉ほど上昇率が大きく, 葉位別の葉鞘重率はほぼ一定の時期に等しい値となり, その変化曲線は交叉する。この時期はりん葉が形成されてから数日後の本格的な球の肥大が開始される時期とほぼ一致する。3. りん葉形成が開始されてから数日後に, 葉身から葉鞘下部へ, 炭水化物などの盛んな転流がおこり, 葉身の乾物率は低下し, 葉鞘下部の乾物率は上昇する。この状態は肥大期間中継続される。4. 苗が移植されると, 株全体の乾物率が著しく高くなり, 疑似球が形成されるが, 球部への転流は最外葉以外ではあまり活発には行なわれない。根系が再生されると若返つた状態となり, 株全体の乾物率が低くなる。この生理的に若い状態が球の形成開始を遅らせ, 移植による生育の遅滞を補償し, 大球の形成される一因となる。