那須地方におけるリンゴの訪花昆虫に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
リンゴの訪花昆虫の種類およびその訪花活動を知るために, 1965年5月11日-5月17日まで栃木県那須郡黒磯町埼玉の県農業試験場黒磯分場のリンゴ園で調査を実施し, 次のような結果を得た。(1) 調査期間中の気象状況 (第1表) は, 全般に気温は平年並みで風も弱く, 晴の日が多くて, 訪花昆虫の飛来には好条件であつた。(2) 調査を行なつた主要品種の開花状況 (第2表)は, 春季 (3月-4月) の異常低温のため, 全般に開花は平年より10日前後遅れたが, 花の着きは多かつた。(3) 採集された訪花昆虫はほとんどが膜翅目および双翅目に属し, 膜翅目昆虫は総数2,018頭で双翅目昆虫の採集数244頭の8.3倍で, 膜翅目昆虫は5科12属45種であり, 双翅目昆虫は5科14属17種に分類された。(4) 膜翅目の中で最も個体数の多かつた種類はヒメハナバチの一種 Andrena opacifovea で, 次いでミツバチ Apis mellifera, ヒメハナバチの一種 A. kaguya, キオビコハナバチ Lasioglossum trispine, コハナバチの一種 L. subfamiliare-complex, コハナバチの一種(ヅマルコハナバチに酷似の種) L. sp. ad. discrepans, ヒメハナバチの一種 A. sasakii, ヤヨイヒメハナバチA. hobes, トゲホオヒメハナバチ A. dentata, クマバチ Xylocopa appendiculata circumvolans の順であつた (第3表)。双翅目昆虫の中ではシマハナアブ Tubifeva cerealisが最も多く, 次いでメスアカケバエ Bibio rufiventrisが多かつたが, これ以外の種類はごく少なかつた (第4表)。(5)ヒメハナバチ科の A. opacifovea, A. sasakii, トゲホオヒメハナバチ, ヤヨイヒメハナバチは, 今回の調査で採集されたハナバチ類の中では中庸大で, ミツバチと等大またはやや小形ぐらいであり, 訪花活動は非常に活ぱつで, 4種合計して872頭, 膜翅目全体の約43.2%を占め, 最も有力な授粉昆虫であると思われた。(6) コハナバチ科の多くの種はいずれも小形のハチであつて, 個体数が多く, 訪花活動も活ぽつであるが, 花粉媒介者としての役割の点では, ヒメハナバチ類に及ぼぬものと思われた。(7) 双翅目昆虫のメスアカケバエは個体数は多かつたが, 訪花活動が非常に不活ぱつなので, 授粉昆虫としては重要ではないと思われた。シマハナアブは双翅目昆虫としては比較的訪花活動も活ぱつであり, 重要な種類であると思われた。
- 園芸学会の論文
著者
関連論文
- 那須地方におけるリンゴの訪花昆虫に関する研究
- 予察灯で採集したウンカ・ヨコバイ類の卵巣発達程度と交尾個体の割合
- 稲のウンカ類およびツマグロヨコバイの卵巣発育と交尾との関係
- ニカメイチュウ越冬幼虫の加温飼育によって得られた寄生蜂について