果樹の葉内水分不足に関する研究 (第1報) : Pressure chamber による温州ミカン葉の water potential の測定法について
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概要
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1965年に Scholander et al. が紹介してより, 植物体の water stress を測定するすぐれた方法として諸外国で広く用いられている pressure chamber をとりあげ, 温州ミカンを対象として検討を行なつた. 供試樹は尾張系温州, 幼木としてはポット栽植の杉山温州を用い, 1972年夏季に測定を行なつた. 結果は以下に記すとおりである.1) 加圧速度は0.2〜0.6atm/secの間では大きな差はなく, 本実験では, 0.35atm/sec前後の速度で測定を行なつた.2) 着葉枝の測定値は, その着生葉の測定値の平均値にほぼ等しく, このことは両者の道管のψpが動的平衡にあることを示すものと考えられ, 着葉枝を測定することによつて, 精度を落とさずに測定回数を減らすことが可能と思われた.3) 1樹中のψは葉齢によつて異なるが, 同一葉齢の場合には, 日光の当たり方によつて異なり, しや光処理の結果から明らかなように日射量の変動に葉のψは極めて短時間に反応することが認められた. これは日射量の変化に応じて葉温が刻々変化することに基づき, 葉面水蒸気濃度差が変化し, 蒸散速度が変化するためと思われる. 日中の葉のψの分散が大きくなるのも, 個々の葉の微気象的な差異が蒸散速度に影響を与え, それぞれの葉にψの差が生じたためであろう. 蒸散が少ない早期•夕刻の分散は非常に小さく, 0.5atmの差を見い出すのに3葉程度の測定でよい.4) 土壌水分と日の出前の葉のψには密接な関係があり, soil matric potential が-1atm以内でも直線関係にあり, r=+0.977であつた.以上のように pressure chamber method は植物体のψの変化を鋭敏にとらえることが出来るハンディーな, すぐれた測定方法であることを認めた.
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