サボテンにおける接ぎ木ゆ合の生理学的研究 (第2報) : 穂木, 台木間の維管束連絡に対するオーキシンの役割
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概要
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シシオウマル (Notocatus submammulosus var. pampeanus) の発芽1週間目の苗を基部で切断し, サンカクチュウ (Hylocereus trigonus) の挿し木苗の水平切断面上に乗せて接ぎ木した. 両者の維管束の切断面を合わせて接ぎ木した場合 (Method I), 20日目にはほぼ100%の個体で維管束連絡が完成されるが, 横方向に1mm (Method II), あるいは3mm (Method III) ずらせて接ぎ木すると40%あるいは10%の個体でしか維管束連絡は起らない. この維管束連絡に対するオーキシン, TIBAの影響を調べることにより, 穂木内生オーキシンの役割を検討した. 接ぎ木方法には主としてMethodIIを用いた.10〜1,000ppmのNAA水溶液を接ぎ木後2日おきに3回穂木頂端に滴下処理すると, 約90%の個体で維管束連絡が起り, 対照区の40%を大きく上まわった. しかし, 1,000ppmでは穂木に薬害が現われ, 10ppmでは, 穂木と台木の維管束をむすぶ連絡維管束の形成が他の場合に比べて貧弱になった.100ppmNAAを1回 (接ぎ木後0,3,6または9日目), 2回 (接ぎ木後3および6日目) さらに3回 (接ぎ木後3,6および9日目) 処理した場合, いずれの処理でも維管束連絡の割合は大となったが, 3回処理がもっとも効果的であった.NAAの代りにIAA (100ppm) や2,4-D (20ppm)の水溶液を用いてもNAAと同様の効果が得られた.100ppm NAAを接ぎ木後3および6日目に2回処理して連絡維管束の分化時期を調べると, 対照区では接ぎ木後13日目以降に起こる分化がNAA処理によって7日目まで早められることがわかった.接ぎ木後20日目に調査すると, NAA処理区での穂木の生長〔大きさ, 刺座 (側芽) の数〕も対照区に比べて大であった.穂木の代りにNAA (0.01%) を含むラノリンを台木の切断面に乗せると, 15日目には切断面下に再生した表皮直下の柔組織内に, 維管束の切断面と連絡する形成層が分化した.TIBA (0.1%) を含むラノリンを, 接木後3日目ごとに3および6回穂木頂端に処理すると, 維管束連絡にいたる個体は7.7%および0%にすぎず対照区での価を下まわった. またMethod Iの場合には無処理で75%の個体で維管束連絡が起こるのに, TIBA (0.1%) の3回処理でその価は20%にまで減少した.TIBAの維管束連絡に対する抑制効果はTIBA処埋後あるいはTIBAと交互に行ったNAA処理によって打ち消されて, いずれの場合にも50〜80%の個体で維管束連絡が起った.以上の結果から, サボテンの接ぎ木では維管束連絡を支配している要因の一つが穂木内生のオーキシンであると考えられた.
- 園芸学会の論文