はち物容器に関する研究 : (第3報)素焼きばち中の可溶性無機成分
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概要
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素焼きばちの壁面から浸出される無機成分の種類と量について検討するため, 第1報と同じ7個所の市販の素焼きばちを収集し, はち片を粉末にして, その熱塩酸可溶性, 水溶性および酢酸アンモニウム可溶性無機成分について分析を行った.1. 熱塩酸可溶性成分量は東京産の両区(A, B)が各成分とも著しく多く, 一方北茨城産(D)は最も少なかった. 一般的な傾向としては, 焼成温度が高いものほど,可溶性成分量が少なくなるようであった. 成分としては一般にAl2O3とFe2O3が多く, 原土に最も多く含まれているSiO2の浸出量は極めて少なかった.2. 水溶性成分については, 30°Cに保った定温器内ではち片細粉末に脱塩水を加えてポリエチレン瓶に入れ抽出させた. なお, はち片に対する抽出水量比が2: 1〜20: 1の間では水量を多くするほど各成分の抽出量が増加し, 特に10:1と20:1の間で増加程度が著しかった. 各区ともK2O, Na2O, CaO, MgOなどの成分が比較的多量に抽出され, SiO2, Al2O3, Fe2O3, P2O5などは極めて微量であった. 東京産(A, B)からはいずれの成分も最も多く浸出されたが, 北茨城産(D)と愛知県各区(E, F, G)ではCaOとMgOの抽出量が極めて少なかった.10: 1の抽出水量比で1か月間抽出させたはち粉末を, 脱塩水で洗源乾燥後, 再び同比率で1カ月間抽出させた場合の抽出量は全般的に少なくなり, K2OとNa2Oはほぼ初めの20〜60%程度に, またCaOとMgOはさらに著しく減少した. 一方P2O5の抽出量は微量であるが, 二次抽出量の方がわずかに多くなる傾向がみられた.3. 酢酸アンモニウム可溶性成分(置換性塩基)はどの区でもかなり多量に抽出された. 熱塩酸可溶性および水溶性成分と同様, 東京産(A, B)が各成分ともに最も多く, それ以下の順位も水溶性のそれに類似していた.なお, 水溶性CaOは愛知県産の各区(E, F, G)ではほとんど抽出されなかったのに, 置換性CaOは少量ではあるが認められた. 塩基4成分の中, Na2Oのみは他と異なり, 各区ともに置換性含量の方が水溶性より少なかった.以上のように, 素焼きばちから作物に供給される可能性のある無機成分は, K2O, Na2O, CaO, MgOなどであるが, 原料や焼成温度などで量的にかなり異なることがわかった.
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