ブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の果粒中の生長抑制物質とフェノール類との関係
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概要
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ブドウ品種‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の果粒発育過程のうち, 第II期の lag phase のメカニズムを生長抑制物質とフェノール類との関係から追求した. 全フェノール量を第II期及び第III期に分けて調べた結果, 各時期ともほぼ同程度であった. 次にロイコアントシアンや会合型タンニンなどを含むフラバノール型タンニン量を調べた結果, 第II期ではその含量はそれほど高くないが, 第III期の成熟期では高くなり, 全フェノール量のほとんどを占めるに至った. そして過熟期には低下した. 一方, ロイコアントシアンのみを定量した結果, フラバノール型タンニンと同様な傾向を示し, 成熟期には全フェノール量の約44%を占めた.果粒中のフェノール類を一次元のPPCで分離し, 生長抑制活性を調べた結果, 第II期ではRf 0〜0.25部(フェノール部) の活性が高く, Rf 0.75〜1部 (ABA相当部) は低かった. 一方, 第III期ではその逆であった.第III期の果粒中のフェノール類を有機溶媒で7分画にし, 各分画の生長抑制活性を調べた結果, 3分画に活性が認められた. 第II期から第III期の果粒中のフェノール類を二次元のPPCで分離した結果, 19個のスポットを検出した. そのうち13個は明らかにフェノール反応を呈し, 他の4個のその反応は陰性で, 残りの2個はフェノールか否か判定できなかった. 13個のフェノールスポットのうち, 5個は第II期かか veraison 時に多く, 第III期の成熟期以後微量ないし消失した. 他方, 同スポットのうち3個は第III期に現れ, 過熟期に増加し, 4個は第II期, 第III期とも量的変化がなく, 残りの1個は veraison時のみに多量に認められた. 非フェノールスポットの4個のうち2個は第II期から veraison 時にかけて多量に存在し, 以後消失した. フェノールスポットのうち2個は veraison 時または過熟期に2ないし3個に分離した.有機溶媒で分別して得た生長抑制活性のある3分画を二次元のPPCで分離し, 先の二次元のPPCの結果と照合した. その結果, 活性のあるフェノールスポットは原点であることが判明した. また非フェノールスポットのうち2個について, 両方または一方に活性のあることが推定された.以上の結果から, クロマトグラム上の原点にとどまる不動性会合型タンニンと思われるフェノールが, 果粒発育過程の lag phase を制御している1因と思われた.また他の要因として, 非フェノール性物質の存在も示唆された. そして原点にとどまるフェノールは第III期直前に分解され, 低分子のフェノールとなり失活し, その後の果粒の成熟はABA様物質などに制御されるものと思われた.
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