ニホンナシ‘新水’果皮の黒変に伴う生理的変化と温度及び化学物質による制御
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概要
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盛夏に収穫されるニホンナシ‘新水’の果実には収穫後にしばしば黒変現象がみられる. この研究では黒変発生と収穫後の温度との関係, 及び薬剤処理の効果を明らかにすると同時に, 黒変に伴う果実のポリフェノールオキシダーゼ活性, 膜の透過性の変化を検討し黒変の発生機構について考察した.1. 収穫後の果実を1〜50°Cの温度に置いて黒変の発生をみたところ, 1〜10°Cでは黒変は発生せず, 20°Cから増加しはじめ30°C及び35°Cでは黒変は極めて速やかに現れ, 症状も激しかった. しかし40°Cでは黒変は抑えられ, 50°Cでは36時間以内に果実の全面が黒変した.2. 黒変は1,000ppmのIAAによって顕著に抑制された. また, 1,000ppm GA3も黒変の抑制に有効であった.3. ポリフェノールオキシダーゼの至適pH及びKm値は黒変果と健全果で差がなく, 酵素活性も黒変によって高まるようなことはなかった.4. 果実に黒変が発生する2〜3日前から, 果実切片からK+の溶出量は急激に増加し, 黒変の発生に伴ってさらに増大した.膜からのK+の溶出についてコンパートメントアナリシスの手法 (2, 11) によって解析した結果, 果肉細胞の液胞からのK+の溶出速度は, 1〜10°Cでは極めて遅く,30°C以上で急激に増加した. また黒変がほとんど発生しなかった40°Cでは, K+の溶出速度も特異的に低下した.以上のことから, ニホンナシの黒変は液胞の透過性増大等によるコンパートメンテーションの喪失によって引き起こされることが示唆された.
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