低夜温下における促成トウガラシの開花, 結実について
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概要
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トウガラシの小果種 (適夜温23°C) を夜温18°Cで栽培した場合, 単為結実果が増加し, 秀品果率が著しく低下した. 一方, 大果種では経済栽培の適夜温は18°Cであり, この温度では結実, 品質には問題は見られなかった.夜温18°C下における小果種, 大果種の開花習性の相違は主として開葯時刻に見られた. すなわち, 大果種では開花と併行して開葯は進行したが, 小果種の開葯時刻は大果種と比較して2時間以上の遅れがあり, 開花当日の16時までに開葯しない花も多数見られた. さらに,開葯した花についても, 小果種は大果種と比較して花粉の湧出量は明らかに少なかった. 自家受粉を前提とすれば, 開葯の遅れは受粉の遅れにつながり, 雌ずい, 花粉の老化による受精障害も考えられる.雌ずい, 花粉の老化と受精力の関係を調査した人工受粉の結果では, 冬期間では雌ずいは開花後二日間, 花粉では開花後三日間は高い受精力を有しており, 雌雄器官の老化は考えられなかった. しかしながら, 開花当日での花粉の発芽率は平均11.8%と低く, また, 花粉の採取時刻によっては開花当日であっても不稔率は50%に達した. したがって, 人工受粉と異なり, 自然受粉下では雌ずいへの受粉量が少ないだけでなく, 無能花粉によって不受精となる可能性が高かった.以上の結果から, 夜温18°C下で経済栽培を成立させるためには, 何らかの方法で開花当日の雌ずいへの受粉量を多くすることが必要である. これには, 小果種あるいは大果種の花粉を人工受粉して正常果が得られたことから, ハウス内への蜜蜂の放飼が考えられる. この場合, 開花当日に開葯時刻が早く, 花粉湧出量の多い大果種を受粉樹として混植すれば効果はさらに大きいものと考えられる.