ササユリ球根の<I>in vitro</I>における増殖に及ぼす液体通気培養条件の影響
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概要
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ササユリ球根の実用的な大量増殖技術の開発を目的として, りん片培養の過程を省力化でき, かつ, 培養をスケールアップできる可能性が高いと考えられるいくつかの培養方法について比較検討するとともに, 液体培地中におけるりん片切片からの子球の増殖に及ぼす培養条件の影響について検討した.<BR>1.液体支持材培養, 液体振盪培養, 液体通気培養およびカプセル培養を比較•検討した結果, りん片切片から子球を大量に増殖する実用的な培養方法としては, 液体通気培養が最も適していると考えられた.<BR>2.りん片切片からの子球の分化は, 培養3週から8週にかけて急激に増加し, その後の増加数は少なくなった. 平均球径の増加は, 3週から5週にかけてみられた後, 停滞し, その停滞は子球の分化が少なくなる8週以降も続いた. したがって, 子球を効率よく肥大させようとする場合, 培養8週頃以降には, 新たな培地の補給が必要であると推測された.<BR>3.液体通気培養において, 培地の主要塩類濃度やショ糖濃度を, 寒天培養における場合と同程度あるいはやや低くすると子球の分化が早まる傾向があった.培養8週での培養結果からみると, 主要塩類濃度はMS標準濃度の3/4倍が, ショ糖濃度は4%程度が適していると考えられた.<BR>4.液体通気培養における培地中の生長調節物質として, NAAが子球の分化促進に有効であった. NAAの濃度は, 子球増殖率, 培養スペースの有効利用, 増殖した子球の取扱いの容易さなどを考慮すると, 0.01mg•liter-1が適していた. KinetinやABAの添加は,子球の分化を抑制した.<BR>5.通気ガス中の酸素濃度としては, 20.9% (すなわち大気) が子球の分化に適しており, 酸素濃度をさらに高めても子球分化に対する促進効果は認められなかった. 培養温度については, 子球の分化を抑制するような28°C以上の高温を避ければ, 23°Cを中心としたやや低温側の広い温度範囲で培養できることがわかった. 培養中の光の影響については, 明条件と暗条件とで, 子球の分化にほとんど差はみられなかったが,前者では, 分化した子球からの葉の伸長や発根がやや多くなる傾向が認められた.
- 園芸学会の論文