キュウリの高温障害に及ぼすアブシジン酸の影響
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概要
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本研究は, キュウリ (Cucumis sativus L.) の高温障害がアブシジン酸 (ABA) の散布によって軽減されるか否かを確かめる目的で行った. キュウリ苗に0,0.01,0.1および1mMの天然型ABAを噴霧しでから, 29°C (常温) および41°C (高温) で3時間処理し, 温度処理中の蒸散速度, 葉温, 処理直後の葉緑素光強度, 処理後の生育と初期収量を調べた. 相対的葉緑素蛍光強度は高温処理によって低下し, 特に1mM ABAでの低下が著しかった. 温度処理中の葉温は, ABA無処理では雰囲気温度に近かったが, ABAで処理すると雰囲気温度よりも高くなり, その程度は濃度が高いほど高くなった. 特に, 1mMのABAを散布して高温で処理すると, 葉温は45°Cに達した.このときの蒸散速度はABA濃度が高いほど小さくなる傾向がみられた. したがって, 1mMのABA濃度で高温処理を行った場合の顕著な葉温の上昇は,ABAによる蒸散速度の低下に起因すると考えられた.また, 1mMのABAで処理して高温に遭遇させた苗では, 5日後に葉にネクロシス, クロロシスおよび葉の巻き上げが現われた. これは, キュウリの高温障害が葉温約45°Cで発生することを示すものである. 温度処理後7日間の主茎長の伸長に対しては, 常温ではABA処理の影響は認められなかった. しかし, 高温ではABA濃度が高いほど抑えられる傾向があり, 特に1mMでは著しく抑制された, 果実の初期収量は,ABA濃度が0.1mMでは高温処理の影響を受けなかったが, 1mMでは小さくなる傾向が認められた.<BR>これらの結果から, ABAの葉面散布は高温障害を軽滅しないか, 高濃度ではかえって障害の発生を助長することが明らかになった. これは, ABAが蒸散を抑制して葉温を上昇させることが主因であった.
著者
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小田 雅行
野菜•茶業試験場
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Thilakaratne Dissanayake
スリランカ植物遺伝資源センター
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李 智軍
中国公東省業科学院経済作物研究所
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佐々木 英和
野菜•茶業試験場
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佐々木 英和
野菜•茶業試験場
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小田 雅行
野菜•茶業試験場
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Thilakaratne Dissanayake
中国公東省業科学院経済作物研究所
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Thilakaratne D.M.
中国公東省業科学院経済作物研究所