果樹の生育に及ぼす土壤の物理的組成の研究 : III 土壤水分と植生との關係 (第1報) 桃•梨•柿實生の生育に及ぼす土壤水分の影響
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概要
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1. 本實驗は2囘に行われ, 第1囘は4月12日〜5月31日の間に梨, 桃の實生を15, 20, 30, 40, 50%, 第2囘は6月2日〜7月17日の間に梨及び桃を夫々10%以下, 30, 45%及び10%以下, 10, 30%に, 柿を15%以下, 15, 20, 30, 40, 50%の土壤水分の壤土鉢植に生育せしめ, 地上部伸長成長を測定し, 實驗打切時には地上, 地下部の重量を測定又地下部の觀察及び一部葉中の窒素含量の測定を行つた。水分の調節は毎夕容器毎に秤量し, 計算により求めた所定の含水量時のボット全重量との差だけの水量を補つた。2. 葉が萎凋, 變色, 乾燥する時の土壤水分は梨8.5% (容水量の22%), 桃6.8% (18%), 柿11% (29%), (但し壤土に於て) であつた。地上部の伸長生長の停止する土壤水分含量は梨14〜15% (37〜39%), 桃13% (34%) であつて柿は20% (52%) にても伸長を示さない。桃は乾燥に強く20% (52%) にても比較的良く生長した。地上部の伸長の最適の水分含量は何れも30〜40% (79〜105%) であつて特に柿にては40% (105%) の方が旺盛であつた。土壤水分50% (131%) の時は浸水状態を示し, 何れも地上部の生長は不良となり, 特に梨が惡く小葉であつた。尚桃は特に葉が黄變し易く40% (105%) にて黄變し, 梨は45% (118%) にて黄變した。柿は50% (131%) にても初めの間は黄變しなかつたが小葉であつた。葉の黄變, 矮化は窒素缺乏の象徴であり同一種類の果樹の間では葉中の窒素含量と一致していた。3. 地下部の重量は梨, 柿に於ては土壤水分含量に對し地上部の重量と同樣の影響を受け前記の地上部の生長と概ね同じ傾向を示すが桃のみは乾燥しても地下部の生長は地上部に比し大であり, この關係はT/R率に明らかで, 30%區 (79%) が2.38對し15% (39%), 20% (52%) 區にては夫々1.21, 1.61となつている。土壤水分含量が40% (105%) となると何れも地上部の生長が地下部の生長に比し大となつてT/R率は増加しており, 50% (131%) となると何れも甚しく地下部の生育が不良となるが特に梨が甚しくT/R率がにも達している。根の觀察によると40%區 (105%) に於て桃は既に主根基部に皮目を生じ過濕の状態を示すが, 柿は白色吸收部多く30% (79%) と同程度の新根の生長を見た。梨にては45% (118%) にて僅に皮目を生じた。50% (131%) となり浸水状態となると主根先端は黒變枯死し, 基部に皮目を著しく生じ, その部位より地表面に沿い新根を出し, この部位が漸次上昇していたが特に梨に甚しかつた。4. 以上の如く單に地上部の伸長生長のみでなく葉の形質, 窒素の吸收, 根部の發育及び機能を調査する時は, 健全な幼樹の發育の爲に必要にして且充分な土壤水分含量は寧ろ20〜30% (容水量の60〜80%位) であり, この間にあつて果樹の種類により適性を異にする。即最適の水分含量はこの範圍内にあつて桃では乾燥側にあり, 梨特に柿は寧ろ濕潤側にある。
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