果樹の生育に及ぼす土壤の物理的組成の研究:II 土壤空氣と植生との關係 (第2報) 桃實生の生育に及ぼす深耕の影響
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概要
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1. 本實驗は長野縣産野生桃の實生を深耕1米堆肥混入區, 同無堆肥區及未深耕區に植栽し, 落葉前迄の地上部の生育を調査すると共に最後に掘上げて地下部の根群の分布生長量を調査し, 一部根, 主枝, 副梢, 葉等に就き分析した。一方土壤の含空氣孔隙量, Eh價及酸素濃度等を深さ15cm及60cmの箇處に就て時期的に測定した2. 全孔隙量は未深耕區深さ60cmが深耕區深さ15cm, 60cm及未深耕區深さ15cmより幾分少くなつて居る。そして其差は深耕203日後の10月2日にも認められた。然し含空氣孔隙量は土壤の深さによる差が大きく, 深さ15cmは深耕の有無に拘らず大で, 深さ60cmは深耕堆肥區, 深耕無堆肥區, 未深耕區の順に少くなつて居り, 特こ未深耕區深さ60cmは土壤水分の多い4月より8月の間は其値は5%を前後し時には3%以下となつた。淺見氏(1)が含空氣孔隙量の根に對する限界度は7%と1%の間であるとせられて居るが, 本實驗に於ても未深耕區の根の生育は不良で, 特に深さ60cm以下には殆ど根の伸長は見られなかつた。3. 土壤空氣の酸素濃度は根の生育の旺盛なる區で而も土壤が深い程酸素の濃度の減少を見たが, 深耕堆肥, 無堆肥2區の深さ15cm, 60cm及び未深耕區深さ15cmとも15%以上あり, 酸素不足による障害を認められなかつたが, 未深耕區深さ60cmは粘土多く構造が緻密である爲土壤空氣が採集出來ず酸素濃度を測定し得なかつたのであるが, 土壤中の空氣の絶對量の不足の結果, 根が伸長しようとすれば其桃の最小必要酸素濃度5%以下となるのではないかと考へられる。4. Eh價は特に深耕無堆肥區が高く, 深耕堆肥區は堆肥混入の爲其價が低かつた。何れにしても深さ15cmは60cmよりも高く土壤の深さによる差が顯著であつた。深耕無堆肥區を未深耕區に比較するに特に深さ60cmに於ける其含空氣孔隙量の増加とEh價の高い事とが關聯して居るので同一地内の土壤にてはEh價は通氣の良否を示すものとして利用し得る。5. 地上部, 地下部の生育は一般に深耕堆肥區が最も良く, 深耕無堆肥區が此に次ぎ, 未深耕區が最も惡かつたが, 根の深部への伸長は深耕無堆肥區が最も深く, 未深耕區は淺く, 深耕堆肥區は中間であつた。又地上部の初期の生長は反つて未深耕區が最も良く, 深耕無堆肥區が惡かつたが此時期の根群は單に淺く分布して居る事と深耕區に於ては下層の地力の少い土壤が作土に混じ反つて生育に不適であつた爲と考へられる。6. 樹體分析の結果深耕により水分含量の増加, 乾物量の減少が見られ, 深耕により生育期末期の生長の旺盛となつた事を示す。又深耕の影響として灰分量, 燐酸は若干減少する。但し絶對量は多い。葉に於てはN及びK2Oが増加する。特こK2Oの増加は顯著である。堆肥施用により一般に深耕の效果が肥效としては勿論, 物理的組成改良の爲にも増進せられた。又深耕區は未深耕區に比しCaOの含量が多かつた。
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