アストロサイトによるシナプス伝達調節
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概要
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星の光のような放射状の突起を持つ細胞群を1893年にvon Lenhossekが「アストロサイト」(星状膠細胞)と名づけてから,その生理機能の本格的解明が始まるまでに,およそ100年が必要であった.光学顕微鏡観察からは,極めて小さい細胞体(径6〜11 μm),長く伸びた20〜60本もの突起,および,血管やニューロンと接触する突起先端部(終足)などの特徴が見いだされ,電子顕微鏡観察からは,シナプスを密接に取り囲む姿が認められた.それらに基づき,血液脳関門,神経細胞への栄養供給,そして血管からニューロンにいたる構造物を支える補強構造としての役割が推定された.近年,細胞内カルシウム濃度イメージング法やパッチクランプ法などの新技術が,シナプスとアストロサイトの空間的関係が維持された脳スライス標本やin vivo脳などの標本に応用され,シナプスにおけるその能動的機能の研究が進められた.本稿では,シナプス伝達制御における能動的要素としてのアストロサイトの機能に関する現時点における知見を紹介し,シナプス伝達過程がニューロンに作用する薬物の重要な標的であるのと同じように,シナプスを取り囲むアストロサイトの諸機能もまた,それ以上に重要な薬物の標的であるという筆者らの見解を紹介する.
著者
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加藤 総夫
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 神経科学研究部 神経生理学研究室
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加藤 総夫
東京慈恵会医科大学 神経生理学研究室
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加藤 総夫
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター神経科学研究部 神経生理学研究室
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繁冨 英治
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 神経科学研究部神経生理学研究室
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繁冨 英治
Department of Physiology (Laboratory of Dr Baljit S Khakh), David Geffen School of Medicine, Univers
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