アポトーシス関連分子を標的とした敗血症性急性肺傷害の治療
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概要
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急性肺傷害/急性呼吸窮迫症候群(acute lung injury/acute respiratory distress syndrome: ALI/ARDS)は,種々の疾患や外傷などをきっかけとして急性に起こる非心原性肺水腫であり,臨床的には呼吸困難,低酸素血症,胸部レントゲン写真で両側肺野の浸潤影を呈する症候群である.原疾患は多様であるが,中でも敗血症は最も重要な原疾患の1つとされている.一方,敗血症は病原微生物の感染に起因する全身性炎症反応であり,この敗血症を原疾患とする急性肺傷害を敗血症性急性肺傷害と呼ぶ.この敗血症時に血管内皮,肺胞上皮がアポトーシスを起こすことが,ALI/ARDSの病態形成に重要な役割を果たしていると考えられている.従って,アポトーシスを制御することは,特異的治療法の未だ存在しないALI/ARDSに対する治療戦略の鍵になる可能性を秘めている.臨床において,重症敗血症,ALI/ARDSの発症頻度,死亡リスクを改善させる可能性があるとされている3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素阻害薬のピタバスタチンを敗血症モデルマウスに投与したところ,肺機能損傷の軽減効果,生存予後改善とともに,肺におけるアポトーシス細胞の増加抑制が確認できた.それには細胞増殖や生存のkey regulatorであるAktの活性が関わっていることが示唆された.さらに,同様の効果が細胞内cAMPを増加させるオルプリノンとコルホルシンの投与によっても認められた.これらの薬剤は,既存の臨床薬剤でありながら,敗血症性急性肺傷害という新たな分野で治療薬としての可能性を示した.Akt活性を増強することで抗アポトーシス効果を得たこの治療法は,特異的治療の存在しない敗血症性急性肺傷害に対する光明となることが期待される.
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