過冷却点と短期間および長期間の低温暴露によるイネミズゾウムシの耐寒性の評価
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概要
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イネミズゾウムシLissorhoptrus oryzophilusの耐寒性を評価するため,乾燥および湿潤条件下での越冬成虫の過冷却点を測定し,さらに低温に遭遇した後の過冷却点および低温に多数回遭遇した場合と低温に長期間さらされた場合の死亡率を調査した.その結果,イネミズゾウムシは凍結した場合すべて死亡し,耐凍性は認められなかった.乾燥条件下および周囲に氷が存在する条件下の過冷却点は,それぞれ平均−15.2℃,−10.5℃であり,乾燥条件下に比べ湿潤条件下での過冷却点は高温側で凍結する個体が多くみられた.越冬成虫を湿潤条件下の−10℃に3時間遭遇させると1/3が死亡したが,この処理で生き残った個体の乾燥・湿潤条件下における過冷却点は,いずれも低温処理前と変化は認められなかった.また,3時間−10℃に繰り返してイネミズゾウムシを遭遇させた場合,乾燥条件下の12回の処理では死亡率は30.5%であったのに対し,湿潤条件下では7回の処理ですべての個体が死亡した.湿潤条件下で−3〜−5℃の低温に10〜120日遭遇させた場合の死亡率は最大で7.5%であったのに対し,20日以上−10℃にさらすとすべての個体が死亡した.以上の結果より,イネミズゾウムシの死亡率は乾燥条件に比べ湿潤条件で高くなり,湿潤条件下で−10℃以下に頻繁にまたは長期間さらされる場合,イネミズゾウムシの越冬は困難であると考えられた.日本国内においてイネミズゾウムシの越冬場所が−10℃以下になることはまれであり,本種は日本国内で越冬するに十分な耐寒性を有していると推定された.
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