カドミウム汚染地域住民におけるN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼとβ2-マイクログロブリンの尿中排泄
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概要
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N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)は,近位尿細管上皮細胞に局在するライソソーム酵素であり,尿細管損傷によってその尿中排泄が増加することが知られている。本研究では,長崎県厳原町のカドミウム(Cd)汚染地域住民(男性,136名;女性,180名)及び茨城県内の非汚染地域住民(男性,158名;女性,140名)を対象とし,尿細管機能障害の指標としての意義が確立されている尿中β2-マイクログロブリン(β2-mg)濃度,及び尿中NAG活性を測定して,Cd環境汚染による腎臓への影響の指標としての有用性を比較検討した。対象者は男女別にそれぞれ10歳ごとの年齢階級に分けた。非汚染地域住民の尿中β2-mg濃度はすべての年齢階級でほぼ一定であったが,尿中NAG活性は60歳以上の年齢階級で上昇した。Cd汚染地域の女性住民において,尿中β2-mg濃度は50歳代以上で,尿中NAG活性は40歳代以上の年齢階級で,非汚染地域住民に対して有意に高かった。また,尿中Cd濃度との関係については,Cd濃度がある一定の値を越えたところで,尿中β2-mg濃度が異常高値を示す被験者数が増加した。一方,尿中NAG活性は,尿中Cd濃度の上昇にともなってほぼ直線的に増加した。Cd汚染地域住民の尿中NAG活性の異常値出現率は,60歳未満ではすべての年齢階級でβ2-mg濃度のそれよりも高かったが,60歳代以上では低くなった。これらの結果から,尿中NAG活性は,尿中β2-mg濃度より早期にCdによる腎臓への影響を反映するが,腎障害の進んだ段階では,尿中β2-mg濃度の方がより顕著にそれを反映して上昇することが示唆された。
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