戦後における児童・生徒の発育促進に関する研究 : 第1報 仙台市小・中学校児童・生徒について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
仙台旧市域全小学校について,昭14・昭20および昭33の3ヵ年度における11才(6年生)を対象とし,その身長・体重の平均値・標準偏差・変異係数・度数分布を比較し,更に昭28・33両年度の小学校6年児童および中学校3年生徒の夫々小学校児童は6ヵ年,中学校生徒は3ヵ年同一人群継続の身長・体重・胸囲を比較し,戦後の発育促進傾向を検討した。1) 11才児童について見ると,身長・体重の平均値は男女とも昭14よりも昭20が明らかに低下し,昭33には昭20に比し非常な向上を示し,而も昭14よりも一層大となった。これらの標準偏差・変異係数・度数分布より見て,身長においては大体においてその平均値の動揺に並行して集団全体が動揺しているものの様であるが,体重においては集団全体が一様に動揺したとは云えず,上位層の動揺が比較的強い。2) 身長・体重・胸囲における夫々の平均値を昭28と昭33の両年度の小学校6年生および中学校3年生の夫々小学校は6ヵ年間,中学校は3ヵ年間同一集団の発育過程について両年度を比較すると,何れの年令層においても最近大きく成っている。而してその両年度の差は発育最盛期項において顕著である。3) 身長・体重・胸囲における標準偏差および変異係数については,小学校時代の低学年を除けば大体において発育期には年令と共に次第に増大し,発育最盛期頃に最大となり,以後次第に小さくなる。即ち発育期には個体差が大きくなる。之を年度別に比較すると発育最盛期までは一般に昭33の方が大で,之を過ぎると却って昭33の方が小さくなる。4) 平均値より2倍の標準偏差の境界値を年度別に比較すると,身長においては上下の境界値とも昭33の方が大である。体重については,下の境界値のみは年令により異なり昭33が必ずしも大とは云えないが上の境界値は総ての年令において昭33が大である。胸囲については,上の境界値が小学校低学年において両年度非常に接近し,下の境界値の差の方が大である。以上の結果より観て,近年における仙台市の少青年の発育促進傾向は,身長に関しては概して全体的に其の発育が促進しつつあると認められるが,体重における促進現象は身長における如く全般が一様に促進しているのではなく下位層の取り残された様相が見られる。しかし小学校児童の胸囲については上位層よりもむしろ下位層の向上のため平均値の増高が見られたのである。
- 日本衛生学会の論文
著者
関連論文
- 都市の一小学校に於ける児童の扁平足について
- 戦後における児童・生徒の発育促進に関する研究 : 第1報 仙台市小・中学校児童・生徒について
- 戦時戦後を通してみた学童歯牙の趨勢ならびに齲歯の罹患傾向について