重金属によるδ-Aminolevulinic Acid Dehydrataseの阻害機構の解明 : I.固定化酵素の利用
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概要
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ヒト赤血球から精製したALADをガラスビーズに固定化する方法を試み,その固定化酵素を利用してALADに対する重金属による阻害と活性回復について検討した。固定化ALADは,ガラスビーズ(7mm)にヒトの赤血球より精製したALADをglutaraldehydeを介して結合させ調製した。この固定化ALADを高濃度の金属イオンにより,殆ど活性がなくなるまで失活させ,DTT,DTT+Zn,EDTA,加熱(60°C,5min)による活性回復を同一の酵素について順次試みた。その結果Zn+,Mn2+,Pb2+による阻害酵素は反応系よりこれら金属を除き,DTTまたはDTT+Znを反応溶液に添加すると容易に活性が90%以上に回復した。またHg2+,SeO32+による阻害酵素はDTT+Zn添加によっても50%程度に活性が回復したのみであった。Cd2+,Sn2+,Sn4+による阻害酵素はbufferの種類により活性回復の程度を異にした。なおDTT+Zn処理した酵素をさらにEDTAまたは熱により活性回復を試みたが,それ以上の回復は殆どみられなかった。固定化酵素は本来の酵素の性質を失う恐れもあるが,今回使用した固定化ALADはKm値,Vmax値,反応の最適pHはそれぞれ0.26mM,22.7units/mg,pH6.4∼6.6と従来の報告と殆ど差はなく固定化による性質の変化は無視できるものと思われる。また固定化酵素は阻害処理,活性回復などの反応を行った後,ゲルろ過を使用することなく簡単に反応液と酵素を分離することができ,しかも繰り返しの分離操作による酵素の離脱も殆どみられなかった。生体内においても酵素は順次いろいろな化学修飾を受けて代謝されていくわけであるから,これらの過程を知る上で固定化酵素は今後一つの良い手段となり得るであろう。
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