ニワトリにおける亜リン酸トリフェニル誘導性遅発性神経毒性に対する感受性および神経障害標的エステレース阻害の加齢による相違
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概要
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亜リン酸トリフェニル(TPP)は,一部の有機リン酸にみられる遅発性神経毒性(OPIDN)に類似する神経毒性を示すことが知られている。著者は,先に,TPPによる神経毒性に対する感受性がOPIDN同様加齢とともに増強することを臨床所見から明かにするとともに,日齢の若い鶏ほどTPPの体内各臓器からの減衰が速やかであることを示した。今回,65日齢および24月齢鶏を用いて,TPPによる神経毒性に対する感受性の相違を組織学的に確かめ,OPIDNの標的酵素とされている遅発性神経障害標的エステレース(NTE)の阻害動態と加齢との関係を明かにすることを目的として,本研究を行った。24月齢鶏では,TPPを体重キログラムあたり50mg静脈内に投与した後6∼7日で神経障害が発症し,14日では全ての鶏に神経失調症状が観察され,坐骨神経と脊髄前索に軸索変性を,脊髄の神経細胞に変性を認めた。65日齢鶏では,同量のTPPの投与によっては,失調症状も組織学的異常もほとんど認められなかった。TPP投与後24時間での神経組織中のNTEは,65日齢鶏に比べ24月齢鶏でより強く阻害される傾向を示したが,50mg/kg投与の場合,両群とも,活性値は対照群のそれの30%未満(Johnsonによる発症予測阻害値)まで阻害された。活性の回復は,大脳では両群ともほぼ同様であったが,坐骨神経では65日齢鶏の方が早かった。TPPによるin vitroでのNTE阻害は,加齢に関わらない結果を示した。TPPに対する感受性は,若齢鶏に比べ成熟鶏で高いことが組織学的検索からも明かになった。また,NTE活性は未変化のTPPにより阻害されるが,加齢に伴う感受性の増強には,TPP代謝活性とともに,NTE活性阻害からの回復速度という因子も関与していることが示された。以上の所見はOPIDNで報告されているものとほぼ一致している。神経細胞の変性等TPPに特徴的な障害は,代謝産物の影響により生じるのかもしれない。
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