上咽頭腫瘍の統計的観察 : 早期診断の観点から検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
上咽頭腫瘍に関する幾多の臨床的・統計的研究業績は, 現在までにもすでに報告されており, 早期診断・治療の指針に関し十分に検討が加えられているにもかかわらず, なお早期発見を逸した反省すべき症例が少くない. それ故に, あらたに早期診断の重要性を再認識し, 1955年1月より1969年12月までの15年間に京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室で取扱かった上咽頭悪性腫瘍43例について統計学的分析を行うと共に, 最近2年間に経験した5例について病歴を紹介し早期診断の観点から症例の検討を試みた.<BR>1. 当教室を訪ずれ, 診断・治療を行った頭頸部悪性腫瘍患者数は741例で, そのうち上咽頭悪性腫瘍は43例5.8%を占めた.<BR>2. 性別・年令別統計においては, 男女比が1.7: 1であり各年令層に分布していたが, 特に肉腫の場合10才代と60才代にピークを認め, 悪性リンパ腫の特徴とされている二峰性曲線を認めた.<BR>3. 初発症状および主訴に関しては, いづれも鼻閉が最多であり, 頸部腫瘤, 鼻出血がこれに次いだ.<BR>4. 初発症状から確診までの期間に関する集計では平均7.6カ月, 最短期間1カ月, 最長期間2年半であったが, 癌腫に比し肉腫に期間の短かい傾向を示した.<BR>5. 初発症状発現から上咽頭悪性腫瘍と確定診断されるまでに種々の耳鼻科的処置や, 手術を施こされる場合が多いが, 最近2年間に, 副鼻腔炎と全く同様の自覚症状を訴えたために, その対症療法のみにとどまり, 早期診断を逸した2例, 原発腫瘍を発見しながら適切な治療がなされなかつた1例, 頸部腫瘤のため外科に受診し, 癌腫との病理組織診断を得ながら原病巣の追求が行われなかった1例, 又慢性中耳炎との合併例1例の病歴を紹介し, 症例の検討を行った.<BR>6. 病理組織学的分類では, 肉腫の場合reticulum cell sarcomaが約40%で最多, 癌腫においては広義の扁平上皮癌が大多数を占め64%に達した.<BR>7. 脳神経症状は, 37.1%に現われ, 癌腫にその頻度の高いことを認め, 粘膜下浸潤型の多いことを示していた.<BR>8. 転移に関しては, 頸部リンパ節転移をきたしたもの36例中, 両側性転移をみたものは21例に達していた.<BR>9. 治療法は癌腫, 肉腫共放射線療法を主体に用いた.<BR>10. 生存率についての集計では, 3年生存率25.7%, 5年生存率18.1%で肉腫に比し癌腫に低生存率を示した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
関連論文
- 上咽頭悪性腫瘍の集計分析と今後の指針
- 甲状腺癌の臨床的考察
- 内喉頭筋の収縮特性と声門運動
- 上咽頭腫瘍の統計的観察 : 早期診断の観点から検討
- Glomus Jugulare Tumor2症例と遠隔転移
- Dermatomucomyositisの症例
- 先天性耳下腺瘻の1例(水越治教授開講10周年記念論文)
- 結核性声帯後部横隔膜症の1治験例
- Cervical island skin flap 法による口腔底悪性腫瘍摘出後の再建
- 喉頭軟骨の骨化とそのパタ-ン--喉頭側面レ線像による観察
- 小児悪性腫瘍の集計的観察
- 食道発声の習熟に影響を及ぼす2・3の因子
- 上顎線維粘液腫の2例と粘液腫の分類(水越教授開講10周年記念論文)
- D-P皮弁による頭頚部再建手術の集計的観察
- 鼻閉に対するオトリビナの二重盲検法による検討
- 保存喉頭の同種移植
- 頸部平行横切開と頸部皮切の検討
- 先天性頚部嚢腫および瘻の22例
- 反回神経麻痺の臨床像
- 頸部腫瘤 過去五年間の統計学的観察
- 耳鼻科領域における消炎剤の利用 Paramidinの応用
- 下咽頭頸部食道癌に対する治療法の変遷 60例の分析
- 喉頭蓋に発生したso-called carcinosarcomaの1例
- Cross-innervation後の筋肉の変化--組織化学的形態からみた筋線維の分布
- 耳鼻咽喉科内視鏡検査におけるDiazepam注射液の臨床経験
- 反回神経麻痺の機能再建手術--歴史的背景と最近の研究成果
- 犬自家喉頭移植 (喉頭移植の実験的研究-1〜3-)