正常家兎蝸牛のSurface Preparation
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概要
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コルチ氏器の組織学的研究の大部分は, celloidin封埋による蝸牛の連続切片で行なわれているが, その方法にはさけがたい限界がある. Engstrom (1966) が“surface preparation technique”なる方法を報告していらい, この方法は多くの研究者によって応用されつつある. 本法は蝸牛の膜様迷路をとり出すために骨迷路を除去せねばならず, そのため大多数の研究者は実験動物として蝸牛が鼓室内に突出しているモルモットを用いている. しかしながらモルモットは実験の種類によっては長期間の観察には耐えがたい場合もあるので, 著者は本法を家兎に応用すべく試みた. 家兎を断頭し, 側頭骨を分離し, 中耳骨胞を開放し, 両内耳窓及び岬角を明視下においた. 手術用顕微鏡下でアブミ骨両脚の延長線と鼓室筋裂との交叉点を指標として, burrにて蝸牛頂をあけ, 両内耳窓を開放し, 蝸牛頂部より1.5% veronal buffered osmium tetroxide solutionを滴下し, それらが両迷路窓より流出するのを確認する方法をとった. 標本採取にあたっては, 蝸牛頂が側頭骨内に埋没しているので, まず手術用顕微鏡下で蝸牛の周囲, 特に裏面をドリリングし, あたかもモルモット蝸牛のごとく蝸牛が中耳腔内に突出した様にした. さらに骨迷路を薄くし, 骨壁, Lig. spirale及びVas spiraleを除去する事により, 膜様迷路を全回転に渉って明視下におくことが出来た. かくして蝸牛全回転よりコルチ氏器の部分をsurface specimenとして連続的に採取し, グリセリンで封入後, 位相差顕鏡にて検鏡した. この方法により家兎のコルチ氏器の標本採取後短時間に, 広い範囲に渉つて, 有毛細胞はその聴毛から蓋板へ, 核から基底板迄, 又柱細胞はその頭板から内外柱細胞の結合部を, 夫々optical sectioningしながら観察することが出来た.<BR>家兎コルチ氏器の細胞構造は, モルモットに比較して, 大きな差はみられなかった. 家兎を用いてもsurface preparation techniqueが可能であり, 今後広く応用しうると確信した.
著者
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