高速度映画による発声時の声帯振動に関する研究
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概要
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高速度映画により声帯振動のメカニズムと音声の高さと強さの関係, ならびに各種起声に関する研究を行ない, 新しい知見を得たので報告する.<BR>被験者は22才男子で2年以上の声楽訓練を受けた者と, 非訓練者30才男子を選んだ. 研究を行なうにあたつて著者は新しい高速度映画撮影装置を開発し, さらにテープレコーダー (Sony FT-I) ならびに2チャンネルオッシロスコープ (日本光電DC-7) を用いて音声記録をなした. 高速度カメラ (日立ハイマック) を使用し, オッシロスコープ上に描記された音圧波形を同時に撮影した.<BR>普通の発声中の声帯振動は, 三次元の運動であることを確認した. 声帯上唇部中央において水平面では, 側方に向う楕円運動を示し, 垂直面ではやや前方に傾いた桿状運動を, また, 前額面では一番動きが大きく側方に向う楕円運動を示すことが判明した. 前述の動きに加えて, 声帯の粘膜波動についても追求した.<BR>音声の高さと強さの関係について次のことが判明した.<BR>1. 胸声では, 閉鎖期が比較的長く, 開大期は狭小期より短い.<BR>2. 頭声では, 閉鎖期がないか, また, 部分的に存在してもその時間は非常に短い.<BR>3. 胸声で強さを増すとopen quotientは小さくなり, 開大期は短くなる. また振幅は増大する. 粘膜波動は大きく著明となる.<BR>起声ではbreathy attack, soft attack, hard attackについて観察分析をなした. film上の正確なtime markより声帯の呼吸時の位置からの, 内転開始が行なわれる時点から正確に測定した. breathy attackにおいては, 声帯内転開始から最初の定常部に入る第1周期までの時間は, 他の起声より短い. しかしbreathy attackでも強く, 硬く発声させると, 最初の定常部第1周期開始までの時間は長くなる. soft attackでは第1周期までの時間は, breathy attackの2倍にもなる. hard attackでは, さらにその時間が長くなる. 最も重要な点は, soft attack, hard attackにおいて声帯振動の開始が外転から行なわれることである. これはSmith, Fransworthと全く異なるところである. また, さらに止声についても報告した.
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