視性眼振の機序に関する研究 : 上丘のインプットについて
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概要
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家兎を用いて一側の視神経電気刺激により対側上丘から誘導される誘発電位について層分析をおこなつた. 上丘ユニットの視性眼振時の放電変化を, 上丘ユニットの視神経電気刺激に対する反応潜時と光刺激に対する反応との関連において論じた.<BR>1) 上丘のStr. z. とSte. gr. s. の背側部では, 視神経電気刺激により誘導される誘発電位は2つの陰性波とそれに続く小さな陽性波よりなつていた. 第1の陰性波のピーク潜時は4.5msecであり, 第2の陰性波のピーク潜時は8msecであつた. もつと深い層では, 第1の陰性波のピーク潜時は2〜3msecと短かくなり, 大きな陽性波がそれに続いていた.<BR>2) 誘発電位の層分析の結果から, 視神経刺激により上丘には3種類の興奮が起こることが明らかになつた. 第1と第3の興奮は主にStr. gr. s. の細胞に起こり, 第2の興奮はもつと深い層にもおこることが考えられた. 表層で誘導される第1の陰性波は第1の興奮に, 表層で誘導される第2の陰性波は第2の興奮に相当した.<BR>3) 表層で誘導される第1の陰性波の閾値は第2の陰性波の閾値よりも低く, 第1の陰性波は第2の陰性波よりも視神経の高頻度刺激により良く追随した.<BR>4) 視神経刺激に対する単一神経活動の潜時分布は2つのピークを持つており, 上丘ユニットを2群に分類した. すなわち, 短潜時ユニットと長潜時ユニットに分類した. 短潜時ユニットの反応は第1の興奮に, 長潜時ユニットの反応は第2, 第3の興奮に相当した.<BR>5) 視性眼振時に放電変化を示すユニットは長短両潜時のユニットからなるが, 視性眼振時に放電変化を示さないユニットは短潜時ユニットと1つの長潜時ユニットよりなつていた.<BR>6) 視性眼振に放電変化を示したほとんどのユニットはStr. gr. s. から誘導されたが, 少数のユニットはStr. z. とStratum medullare superficialeから誘導された.<BR>7) 視性眼振時に放電変化を示したほとんどのユニットは光刺激に反応した.<BR>視性眼振時に放電変化を示すユニットは視神経-上丘経路と視神経-視覚領-上丘経路よりのインパルスをうけており, 視性眼振時に放電変化を示さないユニットは主に視神経-上丘経路のインパルスをうけていると結論づけられた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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