声帯ポリープに関する臨床的並びに病理組織学的考察
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概要
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声帯ポリープ125症例に関して, 臨床的並びに病理組織学的検討がなされた.<BR>我々の症例では声帯ポリープは40才代に最も多くみられ, 性別では6対4と男性が女性に比べて多かった. これ等症例の半数即ち63例が, 声帯の前・中1/3の境界部に認められた. 声帯ポリープの大きさは多くは粟粒大或いは米粒大のものが多かった. 障害の側に関してみると, 63例が右声帯に, 44例が左声帯に, 13例が両側にそして5例が前連合に認められた. 嗄声出現より手術までの期間は, 症例のほとんどが6カ月以内であった. ポリープ発生の誘因に関してみると, 75例は音声の過剰使用, 急性喉頭炎等がその誘因として考えられたが, 他の50例はその誘因がはつきりとしなかった.<BR>病理組織学的検索では, 声帯ポリープの上皮層は上皮下層に比較して組織学的変化が少なかった. それに対して, 上皮下層は多彩な変化が認められた. 即ち出血, 血漿浸潤, 毛細血管の拡張並びに血栓の形成等の局所の循環障害によって生じた多様な所見が認められた. これ等の組織像を検索した結果, 声帯ポリーブの病理組織像を次の様な4つの型に分類した. 即ち滲出型 (71例), 増殖型 (25例), 混合型 (12例) 並びに肉芽型 (7例) の4型である.<BR>障害の期間と組織像との関係では, 期間の長い症例でも短い症例でも滲出型も存在すれば増殖型も存在した. しかし4年以上の長い期間の症例では滲出型よりは増殖型の方が多く存在した. このことから我々は初期の滲出性病変が時間の経過と共に増殖型えと移行するものと考えた.<BR>我々は声帯ポリーブ発生の成因について, 局所の循環障害と炎症とが重要な役割をはたしているものと考えた. なぜならば声帯ポリープは病理組織学的に多種多様な血管性病変がみられたということ, また肉芽型という炎症が強く考えられる症例が存在したということから, 我々はポリープ発生の成因を以上の様に考えたのである.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文