七年の間に軟骨肉腫に転化した鼻副鼻腔軟骨腫の一例
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概要
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68才の女子に両側慢性剖鼻洞炎と鼻茸のためCaldwel-Lice氏手術が行われた. その時, 左鼻腔に軟骨腫が見出された. その腫瘍は, 鼻中隔及下鼻介を侵襲した. 筋骨洞, 上顎洞, 蝶形洞に著明な炎症像を組織学的に認めた. 軟骨腫の被膜は炎症性で, 鼻茸のように見えたが, 硬弾力性であつた. 病理組織学的に, 軟骨組織は大部分良性であるが, 処々に多核の細胞と核分裂が認められた. その後, 軟骨腫の遺残は七年間に発育して, 両側の篩骨洞, 上顎洞, 蝶形洞硬口蓋, 鼻咽腔, 眼〓に迄侵入し, 組織学的に軟骨肉腫になつた. 著者は次の如く結論した. 発生の原因は炎症, 原発部位は鼻中隔, 腫瘍の種類は二次的軟骨肉腫, 放射線治療は無効である.<BR>日本における, 現在までの70年間の軟骨性腫瘍を文献上に23例見出し, この統計をとつた. 性別男性10, , 女性12, 不明1. 原発部位は, 鼻中隔6例, 上顎洞6例, 篩骨洞4例, 不明7例, 原因は外傷1, 炎症3, 不明19例. 年令別は0-10才軟骨肉腫1例, 11-20才軟骨腫3例, 21-30才軟骨腫2例軟骨肉腫2例, 31-40才軟骨腫1例, 軟骨肉腫2例, 41-50才軟骨肉腫2例, 61才以上軟骨肉腫1例. 軟骨肉腫の種類は, 一次性6例, 2次性5例, 他不明, 腫瘍の発育は隣接性で血管性, 淋巴管性転移は認められない. 放射線治療は無効.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文