過酸化ニッケル
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概要
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有機化合物の酸化反応において, 溶液中で固体状態のままで使用するいわゆる固体酸化剤として, 今まで活性二酸化マンガン, 酸化銀, 酸化水銀, 酸化鉛, 酸化銅などが知られ, 一般に強い酸化剤ではないが, 一電子酸化剤の性質のものが多く, 特異的な反応性のために, また反応後固体をロ過により簡単に取り除けるという利点もあって, 時々実験室で使用されている。約10年程前中川らはビタミンCの中間原料であるジアセトン-2-ケト-L-グロン酸を製造するのにジアセトン-L-ソルボーズを次亜塩素酸ソーダで酸化する方法の研究を行なっていた際に触媒として加えたニッケル塩が黒色の固体となって浮遊し, これが触媒作用を行なっていることを知った。その際この黒色固体をロ取し, 乾燥した後, 有機溶媒中で酸化剤として使用することを試みたところ, BenzylicやAllylicのアルコールを酸化することを見出した。以後このものを過酸化ニッケル (Ni-POと略記) と名付け, 酸化剤としての研究が始った。大ざっぱに見てこの酸化剤の特徴は, 活性二酸化マンガンと四酢酸鉛に似た酸化能を持ち, 比較的安定で扱い易く, 必要量を量論的に計算でき, しかも再生可能なことである。英国ではすでにBDH社より試薬として販売されているようである。ここではまづこのものの調製法と性質を述べ, ついで酸化反応に用いた最近までの例を記し, 最後にこの酸化反応の機構について簡単に触れる。なお, このものは酸化剤としてだけでなくPolymerizationにおいても開始剤として興味のある性質を示すことがわかったが, これについては紙数の関係でここでは省略する。
- 社団法人 有機合成化学協会の論文
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