循環器疾患における血中カテコラミンの研究
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概要
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循環器疾患とくにうつ血性心不全患者ならびに急性心筋硬塞患者の交感神経活動の指標として,血中ノルエピネフリン(NEと略す)を酵素アイソトープ法により定量した.そして,血中NE値とうつ血性心不全の臨床症状(とくに倦怠感,心悸亢進,呼吸困難を主とする)によるNew York Heart Association (NYHA)機能分類,急性心筋硬塞の経過による変動について検討した.健常者45名平均年令37±13 (SD)才における日本人の血中NEの正常値は0.20±0.10 (SD) ng/mlであつた.また,健常者の血中NEレベルは加令とともに上昇することを認めた.さらに,臥位から立位への体位変換により,血中NEレベルの上昇を認めた.うつ血性心不全患者28名の血中NEは, NYHA機能分類I〜II群において, 0.38±0.04 (SE) ng/mlであり,健常者に比べ有意の上昇を示した. III〜IV群では,さらに高値を示した.急性心筋硬塞患者9名の血中NEは, Killip分類A〜B群の重篤な合併症のない症例において,発症から3日までの急性期血中NEは0.53±0.05 (SE) ng/mlであり, 4日から10日までの0.28±0.03 (SE) ng/mlに比べ有意の上昇を示した.また, 4日から10日までのそれは, age-matchした50才以上の健常者の血中NEレベル0.28±0.02 (SE) ng/mlにまで回復していた.以上,高感度で特異性のある酵素アイソトープ法を用いた血中NEの定量法により,加令,体位変換,うつ血性心不全軽度例,急性心筋硬塞急性期の交感神経機能の亢進を認めた.
- 社団法人 日本内科学会の論文