インスリン結合抗体にかんする研究
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概要
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糖尿病患者の種々の病態とインスリン結合抗体との関係を検討する目的で,主にインスリン使用糖尿病患者につき,エタノール沈殿法による抗体価を測定した.抗体はインスリン使用者にのみ認められ, 1)使用期間6ヵ月以内では抗体価の漸増がみられた. 2)使用期間が6ヵ月以上になると大多数の例で抗体が認められ,その時点で女性の抗体価の平均は男性に比し有意に高値を示したが,インスリンの使用期間,総使用量, 1日使用量,さらには年令,羅病期間,空腹時血糖値,腎症および網膜症の有無と抗体価との間には一定の関係はみられなかつた. 3)再使用例では初回例に比し,抗体価の上昇は急速であつた. 4)インスリンの動物種も抗体価に影響するのがみられた.従来の製剤からmonocomponent insulinに変更した例では,抗体価の漸減がみられたが,インスリン必要量の減少はみられず,また,抗体価の減少速度はインスリン中止例に比し遅延していた. 5)インスリン中止例では抗体価の漸減がみられたが, 6ヵ月後にも抗体が認められた例があつた. 6)免疫抑制剤投与により抗体価の低下する例もあるが,インスリン必要量の減少はみられなかつた.以上より,インスリン使用糖尿病患者における抗体価は,インスリン使用期間,初回使用か,再使用か,およびインスリン製剤の種類などにより動態を異にすることが解明された.なお,免疫抑制剤投与によるインスリン必要量の減少はみられなかつた.
- 社団法人 日本内科学会の論文
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